No.007 ”進化するモビリティ”
Cross Talk

どこでもドア vs タケコプター

大口 ── 一方で、私はクルマの運転も大好きなのです。クルマをコントロールする楽しみとか、そういうニーズは無くならないだろうし、そういう欲求を満たすというのが、今まで自動車産業がやってきたこと。彼らは、そこだけは手放したくないでしょう。完全自動運転が移動体の究極像なのかどうかは、議論が必要なところだと思います。

谷口 ── 私は将来的には、完全な自動化が求められると思います。わたし自身もですが、若い人で、2〜3時間もハンドルを握っているのは嫌だという人は多いです。移動の時間は、仕事とか、何か他のことがやりたいというニーズがあると考えています。

大口 ── ドラえもんの「どこでもドア」は、言うなれば自動運転です。どこにもストレス無く連れて行ってくれる。でも、どこでもドアを持っているにも関わらず、ドラえもんは「タケコプター」も持っている。これは移動もしつつ、いろいろ見られて楽しいという側面がある。だから両方持っている。

「どこでもドアだけがあればいいでしょ。タケコプターは"タケコプター場"で遊んでください」とするのが、本当に良いのかどうか。やはりどこでもドアとタケコプターがマージしたような要素が、まだ残るのではないかと思っています。

谷口 ── 日常生活から解放されて運転を楽しむ。目的は特にない。風を感じることが楽しい。そういう人は今後もいると思います。クルマというのは、もともと嗜好性が高いものです。それは「これまでのクルマ」として、今後も残るでしょう。

しかし「これからのクルマ」は、ラストワンマイル(幹線道路から家庭まで伸びる最後の支線1マイル)の輸送手段とか、公共交通のようになるのではないでしょうか。そして、それを早く実現したところが、次の世界トップ企業になる。今は国も企業も「Googleにやられてしまうのではないか」と恐れていますが、従来の考えを捨てないと、ゲームチェンジはできない。それができないから、日本は家電もパソコンもみんなやられた。どうしたら良いのか、発想を変えないといけません。

大口 ── 「PMV(Personal Mobility Vehicle)」という言葉があります。これから、いろんな乗り物が出てくるかもしれない。新しいホビー的な要素とか、これまでとは全く違う機械が出てきて、一気にブレイクするかもしれませんね。

今後、ロボットカーが登場してきても、運転を楽しみたい人もいるし、それとは別に、新幹線やリニアもある。おそらく、旧来型のクルマが走れる空間は今よりは制限されるでしょうが、多様になっていく姿の方が健全な気がします。メリハリを付けながら、多様なものがうまく共存できる社会ができたら私は幸せかなと思っています。

谷口 ── それは私も賛成です。自動運転が進むと選択肢が増え、自由度が高まるでしょうね。

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.