No.007 ”進化するモビリティ”
Cross Talk

自動運転の普及への道のり

大口 ── 自動運転については、どうやって運用するのかという問題があります。例えば専用レーンを道路に作ったとして、交差点はどうすれば良いのかとか。受け入れる側の空間の問題として、専用にするのか、あるいは混在にするのか、そういう研究は、わたし自身これから取り組んでいきたいと思っています。

谷口 ── ロボットカーには専用レーンが必要になるでしょうね。路面電車のように、決まったレーンがありつつ、周囲のクルマが避けてくれるような方法はありかもしれませんが、事故が起きる懸念もあり、複雑さを排除するためには、完全な専用レーンの方がいいと思います。

大口 ── 普通の道路では運転支援までにしておき、専用レーンに入ったらロボットカーになり、メールチェックをできたりする。そういったように、切り替えられるようにしておくのが、結果的には一番受け入れやすいでしょう。もちろん今の空港リムジンみたいに、特化した用途のロボットカーも方向性としては有り得ます。

谷口 ── まずは実際に走ってみないと駄目でしょ、ということで、今、名古屋市内で自動運転の実証実験をやろうとしています。今回の注目点は、"市街地での走行"になるということです。市街地での自動運転は、おそらく日本では初めて。何としても成功させて、未来のビジョンを示すことができればと考えています。

大口 ── 時期やエリアはどうなっていますか?

谷口 ── 年内から来年にかけて実施する予定です。一番手として実験する我々が事故を起こすと、今後やろうとする皆さんに迷惑をかけることになるので、慎重に慎重を重ねてやろうと思っています。場所はイオン守山近辺から竜泉寺口交差点付近までの約2.2kmで、それほどカーブがないエリアですね。

大口 ── ぜひ成功させてください。

谷口 ── そのほか、自動運転の技術を、自動車以外の分野にも広めていこうとしています。農業、土木、建築、物流などの分野で、従来の機械に我々のコントローラやセンサーシステムを入れて無人化する。少子高齢化による人手不足が社会問題としてある中、過酷な労働から解放して、みんながもっと楽しい生活を送れるようにしたいと思っています。

自動車は先端技術だからこそ、その技術をいろんな分野に派生させることができます。今はプロダクトラインを横軸に展開しようと頑張っているところです。こういったところにも、今後ご期待ください。

Profile

大口敬(おおぐち たかし)
※写真左

交通工学者、生産技術研究所先進モビリティ研究センター教授

1964年東京生まれ。'93年東京大学大学院工学系研究科土木工学専攻博士課程修了。'93年日産自動車総合研究所交通研究所入所。'95年東京都立大学工学部土木工学科講師。'00年同大学院工学研究科助教授。'05年首都大学東京(同年より校名変更)大学院都市環境科学研究科准教授。2009年より東京大学生産技術研究所教授。警察庁規制速度決定の在り方に関する調査研究委員会など各種委員を多数務める。主な著作に『改訂 交通信号の手引』(編集幹事)『交通渋滞徹底解剖』(編著・前著ともに丸善)『コンパクトシティ再考』(分担執筆・学芸出版社)などがある。

交通工学の立場からITを利用した交通システムの進化について研究している。

http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/~takog/

谷口恒(たにぐち ひさし)
※写真右

ZMP代表取締役社長、元エンジニア

1964年生まれ。群馬大学工学部卒業後、制御機器メーカーでエンジニアとしてブレーキシステム開発に携わる。2001年に科学技術振興機構(JST)発のベンチャー企業としてZMPを創業した。2004年に家庭向けロボットを開発。2007年からロボット開発で培った自動制御技術を自動車に展開。2009年に実車の10分の1サイズの技術開発用プラットフォーム「RoboCar1/10」、2012年にクルマの各種データをインターネット上のクラウドに保存して走行中にリアルタイムにクルマの監視・分析ができる「RoboCar HV」を開発した。2013年5月には、車載制御系システムとスマートフォンを接続し、クルマからの情報を使ったスマホアプリが開発できる「カートモ® SDK」を発表した。ZMPの日本発の自動運転技術は世界が注目しており、Intelも出資している。

http://www.zmp.co.jp/

Writer

大塚 実(おおつか みのる)

PC・ロボット・宇宙開発などを得意分野とするテクニカルライター。電力会社系システムエンジニアの後、編集者を経てフリーに。最近の主な仕事は『日の丸ロケット進化論』『完全図解 人工衛星のしくみ事典』(マイナビ)、『人工衛星の"なぜ"を科学する』(アーク出版)、『小惑星探査機「はやぶさ」の超技術』(講談社ブルーバックス)、『日本の宇宙産業Vol.1〜3』(日経BPコンサルティング)など。宇宙作家クラブに所属。
Twitterアカウントは@ots_min

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.