No.007 ”進化するモビリティ”
Cross Talk

クルマはもっと安全なものになる

大口 ── 自動運転に対しては、「交通事故を減らしたい」という社会的なニーズもあります。交通事故で多いのは人間対クルマ。都市の細街路(狭い道路)で発生しやすいので、そこでクルマの速度が上がらないようにする仕組みは、もうちょっと考えた方がいいですね。

例えば、住宅街の細い道路に、歩行者用のガードレールが設置されている場合が良くあります。本当は歩行者を守りたいのだろうけど、ドライバーからすると、車道と歩道が明確に区別されているため、スピードを出しやすくなってしまっている。逆に、わざとジグザグにするとか、路面を凸凹にするとか、そんな工夫も考えられます。

でもドライバーが意図的にアクセルを踏んだら、やはりスピードは出てしまう。それで痛ましい事故も起きました。それを、どんなに踏んでも細街路では時速30km以上出ないようにするとか、自動的なシステムの介入を考えてもいいかもしれません。

谷口 ── これまではアナログ的な対策が実施されてきました。でも今後、IT技術、ロボット技術によって、インフラ側に依存せず、問題を解決することはできると思います。

大口 ── ある条件下の場所・時間帯において、ある程度以上に速度が出せないクルマにしてしまう。これは非常に反発が強いアイデアでもあるんです。自動車産業的には、なかなか受け入れてはもらえないでしょう。でも交通事故を減らすということを本当に考えるのであれば、そこまで考える必要があるかもしれませんね。

谷口 ── ハードウェアではなく、データやソフトウェアを活用する方法もあります。例えば路面に何もなくても、クルマがその場所に行ったら、まるで凸凹があるようにクルマが振動して速度が落ちるとか。あるいは子供が飛び出す可能性があることをクルマに伝え、クルマがそれを視覚化してドライバーに分からせるとか。

これまでの土木や道路の知見をデータ化、それをクラウドに上げておいて、クルマがクラウドに繋がる。すると、今まではハードウェアがやらなければならなかったことを、バーチャルなインフラでやれるようになり、事故の減少に繋がる。大口先生の知見は、これからのデータ化に非常に重要になってくるのではないかと思います。

大口 ── そういうことができれば非常に良いですね。将来的に、みんなクラウドでやれれば、例えば「見通しが悪いから」と言って街路樹を抜かなくても済む。道路の見通しが悪くても、見えないものを見えるように、ITでカバーすればいい。

谷口 ── ある意味、「自動車のロボット化」ではなく「街のロボット化」ですね。

大口 ── 私も先日、掃除ロボットを導入しましたが、生活様態が変わりそうな気がします。いろんな部分にロボット的な要素が入ってくると、それに対して最適なように、空間を作り替えることも有り得る。課題を解決できると分かってくれば、街を変えたり、制度を変えたりということが、徐々に起こってくるでしょう。

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