No.014 特集:テクノロジーとアートの融合
連載01 コネクテッドカーが本格稼働
Series Report

5Gで検討されている周波数の候補には、主に28GHz、39GHz、73GHzの3種類があり、LTEで使われている5GHzやサブギガ帯よりはずっと高い周波数になる。最高速のデータレート10Gbpsというのは、最も周波数の高い73GHz帯で実現されるだろうが、4Gとの中間的な周波数の28GHz帯にもメリットがあり、どちらも採用される可能性は高そうだ。さらに、4Gと5Gは互いに欠点を補い合う技術であるため、両者は共存するとみられている(図4)。

クルマの通信でも4Gと5Gが共存する
[図4] クルマの通信でも4Gと5Gが共存する
出典:Qualcomm

常に周りと通信することで無事故に

本連載の第1回でも紹介したように(参考資料3)、V2VやV2Xでは無線電波による通信を行い、クルマ同士はお互いの位置を知る。そして究極の自動運転では、たくさんのクルマがまるで無数のアリの集団行動のように、密集しながらも互いにぶつからずに行き来できるようになり、事故は限りなくゼロに近くなる。たくさんのクルマが行き交う場合には、周囲のクルマの動きを検出しながら、ハンドルをどう切るかをとっさに判断しなければならない。そのためには、車載コンピュータともいうべきECU(電子制御ユニット)回路に周囲情報をリアルタイムで送り、瞬時に制御する必要がある。もはや人間では操作・対応できない世界だ。だからこそ、自動運転は究極の事故ゼロ社会を作るためのテクノロジーとなるのである。これを実現するには、クルマが常に周囲と通信していなければならない。

周囲のクルマと通信する(互いに認識して譲り合ったり進んだりする)ためのテクノロジーには、以下のようなものがある。ミリ波のような高周波信号を発信して、周囲のクルマからの反射を検出するレーダー。光(目に見えない赤外光など)を周囲に照射して、近くにクルマがあれば、その間の距離を測定するLiDAR(Light Detection and Ranging:ライダー)。高速パルス光を照射して、その反射波の位相のズレから距離を測る)。そのほか、従来のCMOSイメージカメラや、超音波センサ、GPSなども使われる。

セキュリティはしっかりと

クルマが常に無線ネットワークにつながっていれば、サイバー攻撃の標的になりやすい。このため、セキュリティを確保することは重要だ。通常はIDとパスワードで個人を特定し認証するが、ハッカーはそれらをスキャニングなどで盗もうとしてくる。このため、認証を何段階かに分ける、盗まれてはまずいデータは暗号化し読めないようにしておくといった対策は欠かせない。

また、セキュリティを何重にも施し、部屋ごとにカギを設けるなどすれば、安全性は高まるものの、使いにくさも増す。このため、ひとつのコンピュータを仮想化技術(1台のコンピュータの中に複数のOSやプロセッサを載せて、まるで複数台のコンピュータがあるように見せかける技術)でいくつかの部屋に分け、例えばウェブを見るだけの部屋はカギ(IDとパスワードによる認証)をかけず、暗号キーを保存する部屋はカギをしっかりかける、という考え方が必要になる。もちろん、部屋から部屋への防火壁(ファイヤーウォール)は、頑丈にしておかなければならない。

パソコンの立ち上げ時にIDとパスワードを要求するように、外部無線から車内ネットワークに入ってくるときにはカギ(認証)が必要な設定にしておく。また、認証はこれまでIDとパスワードを使ってきたが、個人を特定する生体認証というシステムも注目されている。指紋や虹彩、手の静脈血管のパターン、声紋なども個人個人で違うため、認証に用いられることが多い。こうしたものはまだクルマには使われていないが、盗難防止に生体認証を加えようという動きもある。

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