No.011 特集:人工知能(A.I.)が人間を超える日
Expert Interview

データ解析のため、2つの組織を設置

──アクサ生命グループでは、具体的にどんなデータ処理を行っているのですか。

データには2通りあると考えています。まずはサービスに組み込むためのもの。先ほどの話に出たような、お客さまの危険を事前に察知してアドバイスを送るためのデータです。

心筋梗塞や脳卒中になりそうな人を未然に助けたり、なってしまった人を素早く見つけてベストなルートでお医者様にご紹介したりするためには医療機関のデータが必要ですし、健康保険組合などに協力を仰ぎ、膨大なデータを積み上げて、健康な時から予知に向けて備えることが重要です。

もう1つは、お客さまの一般行動に関するデータ。例えば、ウェブにアクセスした後、どういう風に動かれるかとか、コールセンターではどんな話をされているのか、買い物の基準はどういうものかといった内容です。つまり異業種を含めたビッグデータです。

個人データである必要はないので、かなり広範囲なものが欲しいところです。こうした一対一になっていないデータを数学的に解析する機関がアクサグループ内にかなり大きな規模で存在します。私たちが「データレイク」と呼んでいるところにどんどんデータを入れ、数学者が解析するのです。

──チームはどれくらいの規模で、何をされているのでしょう。

2種類の別の機関があります。まず、事業研究に近いことを行う「アクサラボ」という機関がシリコンバレーと上海にあります。ここでは世界中の医療や生・損保などに関わる研究、アプリの開発、スタートアップやテクノロジーの先端企業とのパートナーシップなどを行っています。世界中のベンチャー企業に接触して、彼らの事業が保険ビジネスに将来どのような影響を与えるかなども研究しています。

もう1つは「アクサデータイノベーションラボ」と呼ぶ組織で、パリとシンガポールに拠点があります。保険に精通したデータサイエンティストと呼ばれる数学者が、世界で最も集まっている機関ではないでしょうか。

構造化されたデータも、コールセンターやウェブのログなど構造化されていないデータも、どんどんデータレイクに放り込みます。それらはスーパーコンピューターが3台くらいないと解析できない位の量になるのです。

そこから何が見つかるのか最初は分からないのですが、数学者が頑張ってマシンラーニングします。その結果、「30歳の男性はこの商品とこの商品の組み合わせを好むらしい」といったユニークな切り口が見つかる時もあれば、何も見つからない時もある。そういったプラットフォームです。

パリにあるデータイノベーションラボ

──国内でアクサ生命の商品を対面販売している5,500人の営業担当者から得られるデータも活用していますか。

もちろんです。今ちょうど社内でデータウェアハウス(データーベース)を刷新するプロジェクトをスタートして、当社の人間にお客さまが様々なタッチポイントでシェアした情報を一元管理する「360°カスタマービュー」の仕組みを考えています。最終的には、このデータを営業の生産性や販売機会を見つけるのに役立てていきます。

──具体的には?

例えば、お客さまが住所変更をした時というのは、「仕事が変わった」「引っ越しをした」「結婚した」ということですよね。そういったライフイベントは保険の商売としては非常によいタイミングです。このような機会「マイクロモーメント」を特定し、機敏にアクションを起こすことがこれからどんどん求められるので、そのための仕組み作りを進めているところです。

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