No.011 特集:人工知能(A.I.)が人間を超える日
連載01 クルマの安心・安全技術
Series Report

第2回
これまで使われてきた安全技術

 

  • 2016.08.31
  • 文/津田 建二

自動車メーカーが安全対策に乗り出してきたのは、それほど古いことではない。2000年を過ぎたころから安全が技術開発のテーマになり始めていた。それまでは、運転席にエアバッグを搭載したり、横から衝突されても大丈夫なようにメタルバーをドアに搭載するなど、事故の被害を軽減させる、いわゆるパッシブセーフティの時代だった。それが最近はエレクトロニクスを駆使することで、ぶつからない、スリップしない、ハンドル操作を安定させるなど、事故前の積極的な安全策(アクティブセーフティ)をとるように変わってきた。今回の記事では、これまでどのような技術がクルマに盛り込まれてきたか、そして、事故をいかに防いできたかを紹介、解説する。

クルマは、走る・止まる・曲がる、という基本機能に加え、安全性と快適な操作性、環境への配慮といった要素が求められる。最近、注目されている自動運転において、安全性は最も強く求められる機能であり、人間の限りない要望でもある。

タイヤの空気圧をモニターする

安全対策では、過去の事故を教訓にして、それらを2度と起こさないようにする意図から技術開発を行なう。例えば、米国でトラックやSUV車のタイヤが外れて大きな事故につながったことがあった。その原因は、タイヤの空気圧が不十分だったこと。そして、この事故を契機に、2007年から販売される新車には、タイヤの空気圧低下検出機能(TPMS)を装着することが、タイヤメーカーに法律で義務付けられるようになった。それ以来、タイヤの圧力低下による事故は報告されていないようだ。

このTPMS(Tire Pressure Management System)機能は、タイヤ内に空気圧を測定するためのセンサを設置し、空気圧が一定レベルを下回ると。ドライバーに無線で警告するというシステムである。タイヤの空気圧がある程度下がるとパンクしやすくなり、燃費も悪くなる等、不都合が多い。適正な空気圧のタイヤこそが安全であり、事故につながるリスクが少ない。TPMS装置は、それを小さな電池1個で検出する。

タイヤのスリップを防ぐ

雨の日に急ブレーキをかけると、タイヤがスリップし、ハンドルを制御できなくなることが過去には多くあった。これは、ブレーキを踏み続けることによって、タイヤの回転が止まっているのにも関わらずクルマが動くため、タイヤと地面との摩擦が減り、ハンドルが効かなくなる仕組みだ。そこで、ブレーキを踏んでも、ブレーキディスクを絞め続けるのではなく、離したり絞めたりを自動的に繰り返すように制御することで、スリップを防ぐ技術ABS(Antilock Braking System)が1960年代に開発された。このABSシステムは、今ではほとんど全てのクルマに搭載されるようになっている。

さらに横滑り防止機能も1990年代なかばに開発されている。この機能は、坂や曲がっている道路などで慣性力が働くことによって、雨の日などに起きやすい横滑りを防ぐことが目的である。X、Y軸の加速度センサでタイヤの向きと角速度(回転方向センサによって検出されるクルマの車体の回転)を検出し、スピードのデータとともに、ECU(電子制御システム)と呼ばれる分散型コンピュータで、タイヤのロック/アンロックの動作を行う。

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