No.010 特集:2020年の通信・インフラ
連載03 医療・ヘルスケアの電子化
Series Report

アップルは、病院や病院向けのソフトウエア開発会社と提携したものの、今のところは、Apple Watchを医療機器にするつもりはないようだ。というのは、昨年11月の時点でApple社のCEOであるティム・クック氏は、Apple Watchとは別の製品でFDAの認可を受けた医療機器を作る考えを示したからだ(参考資料1*1)。医療機器として製品を応用する場合には必ずFDAの認可が必要だ。これは日本でも厚生労働省の認可が必要なことと同じである。

日本で実用化する場合の問題点

では、日本でヘルスケア製品を発展させるためには何が必要か。医療機器市場への参入はとても難しいという業界の声をよく聞く。連載第2回で紹介したトゥーマズ社のデジタルプラスターSensiumVital(センシウムバイタル)のような機器を病院で導入する場合には、厚生労働省の認可が必要である。しかし、その認可を取得するまでの期間が長く遅いと言われている。

英国のトゥーマズ社は早くも臨床的に試す病院を増やしている図
[図3] 英国のトゥーマズ社は早くも臨床的に試す病院を増やしている
出典:Toumaz

一方、海外では、トゥーマズ社のSensiumVitalの病院での導入実験が広がっている。2014年5月に、英国ブライトン市にあるスパイア・モンテフィオーア病院と米国ミシガン州にあるハーレー・メディカルセンターでの使用が始まった(図3)。実験を通して最適な方法やシステムを構築していくつもりだ。9月には英国保健省が主導するNHS(国民保健サービス)のパイロットプランも始まった。目的は、医師・看護師の負担を減らし、本来の診断・治療に集中してもらうことだ。こうしたトゥーマズ社のSensiumVital製品は、医療機器として、英国保健省の認可を得ている。

医者も巻き込め

日本で、トゥーマズのような新規参入の半導体ファブレス企業が、医療機器として認可をもらうことは困難を極める。そのため、日本で認められている医療機器メーカーは、日立製作所や東芝、オリンパス、テルモ、A&Dなど200社にも満たない(参考資料2*2)。医療機器をこれまで作ってこなかった企業が、1年程度で認可を得られることは到底考えられない。

加えて日本では、医師と一緒にヘルスケア商品を開発することが欠かせない。医療機器は実際に使う医師の意見を聞き、製品にその意見を採り入れながら、商品化にこぎつけなければならない。しかし、その医師一人のための製品では他の病院では売れない。だからこそ、協力してくれる医師をできるだけ多く集める必要があるのだ。

アライアンスは必要

賛同する医師をできるだけ多く集めるためにはアライアンスやコンソーシアムの設立が手っ取り早いかもしれない。

ヘルスケア製品で人の様々なバイタルサインを検出、データ処理して病院の元へ届けるためには、半導体チップや回路モジュールなどのハードウエア企業1社だけで、それを実現するのは難しい。アライアンスがあれば、医療機器を作るだけではなく、その中に組み込むソフトウエア企業も参加しやすくなるのだ。

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