No.010 特集:2020年の通信・インフラ
連載03 医療・ヘルスケアの電子化
Series Report

ソフトウエアの協力も不可欠

ソフトウエア企業に参加してもらえれば、ハードウエアを変えずに小さな改良や変更が可能になる。例えば、これまで体温と心拍数しか測定できなかったデバイスに、血圧や血糖値、血中酸素濃度なども測れるよう拡張する場合、ソフトウエアは非常に有効だ。このようなハードとソフトを組み合わせて、低価格の汎用機の医療機器ができれば、デバイスは普及し、医師や看護師の本来の仕事に集中できる環境が実現される。

一方で課題も増える。2015年2月24日から、医療機器に組み込むプログラムソフトウエアを製造販売する場合、厚労省の承認が必要になることが決定された。ソフトウエアまで承認が必要となると、これまで以上に承認プロセスが増え、時間がかかることが想定される。ただし、厚労省もこのまま手をこまねいている訳ではない。審査の短縮化を促進するため、有望なシーズを持つ大学や研究機関に対して助言するようになり、審査期間が年々短くなってはいるのだ(図4)。

厚労省の認可期間は短くなる方向の図
[図4] 厚労省の認可期間は短くなる方向へ
出典:「医療機器の薬事承認等について」厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室

セキュリティを確保すること

もう一つ、セキュリティの問題もある。病歴や健康状態のカルテは、他人に知られたくない個人情報そのものである。だからこそ、情報漏えいを防がなければならない。低コストで患者データをクラウド上に保存することができる今、クラウドのセキュリティを高めることは急務だ。

ヘルスケア分野でクラウドを利用する場合の規定を作成するグループが活動を始めている。CSA(クラウドセキュリティアライアンス)は、クラウドを利用する際のセキュリティを保証するための最善手法を検討するNPO(非営利団体)。この中にHIM(ヘルス情報管理)ワーキンググループがある。HIMグループは、健康情報に関するサービスプロバイダが、安全にクラウドソリューションを患者に提供することを推進している。

これからの医療機器

今後、ヘルスケア商品が病院の認証を得られるようになれば、家庭でのリモートな健康管理ができるようになる。つまり、病院に通わなくても在宅で毎日の心拍数や体温、血圧などを測り、その生データを病院、あるいはクラウドに送ることで、医師や看護師は病気の早期発見ができるようになり、必要な時だけ病院に来るように患者にアドバイスできるようになる。早期発見ができれば早期治療、そして長生きにつながる。

こういった社会を作り出すためには、患者と病院あるいは医師との橋渡しをするサービスプロバイダが必要になる。世界の医療機器市場は伸びるという予想がすでにある(参考資料3*3)が、こういったヘルスケア商品が医療機器として認められれば、医療機器市場は勢力地図ががらりと変わるだろう。

医療機器市場は成長するの図
[図5] 医療機器市場は成長する
出典:みずほ情報総研レポート

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