第3回
今後の実用化への動きと究極のチップ
- 2016.03.31

ヘルスケア製品の電子化・実用化には時間がかかる。連載第2回でお伝えしたように、英国のファブレス半導体企業のトゥーマズ(Toumaz)社は、ヘルスケアチップの臨床実験をするさい、米国のFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を実験の1年前に申請。さらに実験を始めてから認可を得るまでに、ほぼ1年かかった。日本の厚生労働省に申請する場合は、もっと時間がかかりそうだ。ヘルスケア機器を医療機器と認めてもらい、実用化を早めるためにどうすべきであろうか、考察してみたい。
ヘルスケア機器と認められていない現状
ヘルスケア機器が人の心拍状態や体温、さらには血圧・血流などを24時間測り続け、そのデータを医師も共有できれば、在宅ケアが可能になり、病院に患者が溢れることが少なくなる。その結果、医師の仕事も本来の診断・治療に専念できるようになる。しかし、コンセプトが出てからもう10年にもなろうとするのに、そういった製品の実用化は進んでいない。もっと実用化を早めるためにどうすべきだろうか。実用化に立ちはだかる問題や壁を整理する。
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現状では、フィットビット社の消費カロリー等を測定するブレスレット型のデバイス(図1)やApple Watchなどは、「活動量計」という名称で呼ばれている。歩数や睡眠時間を検出する程度しか測れないためだ。Apple Watchは心拍数も測れるが、FDA(アメリカ食品医薬品局)の認可も医師との共同研究の成果もまだ出ていないため、"医療機器"とは認められていれない。現状はフィットネス機器に分類されている。
アップルはAPIに力点
では、今後、こういったデバイスが医療機器として認定されるためにはどうすればよいか。アップルは5年間に渡り、HealthKitと呼ばれるiOS対応のAPI(Application Programming Interface)(図2)を、ミネソタ州ロチェスターにある最先端医療機関メイヨークリニックと共同で開発。これにより、様々なヘルスケアアプリケーションで取得する健康やフィットネスに関連するデータを、iPhone上で一括管理できるようになった。また、HealthKitで管理・保管する個人の健康データを、メイヨークリニックの医師と共有することで、遠隔地からの医師による健康管理ができるようになった。
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メイヨークリニックの院長兼CEOのジョン・ノーズワシー氏は「アップルのHealthKitはヘルスケア産業と人々との係わり方を大きく変えるであろう」と述べている。さらに、アップルは、2014年6月から医療用ソフトウエアベンダーのエピックシステムズ社と提携。これまでの、同社で管理していた記録データを統合し、HealthKitプラットフォームで、患者の情報を一括管理できるようにした。