LAST ISSUE 001[創刊号] エネルギーはここから変わる。”スマートシティ”
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スマートシティが形づくる新しい市場

米国のクリーンテック系のリサーチ会社パイクリサーチが2011年6月に発表したレポート”Smart Cities”によると、世界のスマートシティの技術インフラへの投資累計は2020年までに1080億ドルに達する。

スマートシティ技術インフラへの投資予想額/世界市場
[図表1] スマートシティ技術インフラへの投資予想額/世界市場(2010年-2020年)
出典:Pike Research

ここで言うスマートシティの技術インフラとは、センサーネットワーク、インテリジェントデバイス、通信プラットフォーム、コントロールシステムなどを指す(図表2参照)。

スマートシティのセグメント
[図表2] スマートシティのセグメント
出典:Pike Research

スマートシティの技術原理は、これまでコントロールがしにくかった環境、交通、セキュリティ、エネルギー、水などの分野において、ITを積極的に活用し、リアルタイムで状況を把握しながら、必要があればリアルタイムで人の判断ないしアルゴリズムによるフィードバックをかけていくというものである。コントロールの対象が無数に存在し、しかも、既存のITシステムと違ってそれらが「オフィスの外」に存在するのが特徴だ。
コントロール対象となるアイテムにはセンサーが設置され、それらが通信ネットワークによってコントロールセンターないしコントロールデバイスに接続される。まさに都市規模で展開するM2M(Machine to Machine)ネットワークだと言えよう。
膨大な数のセンサー、通信デバイス、コントロールデバイスが必要になるため、半導体市場として見ればきわめて巨大な市場が立ち上がる可能性がある。それがパイクリサーチの「2020年までに1080億ドル」という数字の背景だ。
また、日経BPクリーンテック研究所の菊池珠夫氏は、「2020年にはスマート化に向けた半導体市場の規模が、2010年比で20~30倍に拡大する」(「スマートシティを支える半導体」2011年4月25日、日経サイト)と記す。その主な理由として、NAN(Neighborhood Area Network)やHAN(Home Area Network)の通信機能を備えたスマートメーターが現在の年産5000万台規模から2倍近くに膨れあがる可能性があり、さらにガスや水道分野でもスマートメーター化が進むことを挙げている。その他、オフィスワーカーのデスクレベルでエネルギーコントロールを行うBEMS(Building Energy Management System)の普及にも期待が持てるとしている。一例としてはワーカーの着席状況をセンサーで感知して、きめ細かな照明や空調の管理などを行う。これらの機器の相互接続が始まることによって半導体市場は急速に拡大すると考えられている。

こうした技術インフラによって実現されるアプリケーションは大きく、スマートユーティリティ、スマートビルディング、スマートトランスポート、スマートガバメントの4つに分かれる。
これら4セグメントの市場シェアは、パイクリサーチ予測の2017~2020年頃の数字で読み取ると、おおむねスマートユーティリティ35%、スマートビルディング25%、スマートトランスポート25%、スマートガバメント15%となる。スマートメーターを包含するスマートユーティリティがやはり一番大きい。

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