LAST ISSUE 001[創刊号] エネルギーはここから変わる。”スマートシティ”
Cross Talk

インターネットが成功したのは、
技術・市場・制度が三位一体だったから

加藤 ── 1994年から95年にかけてシリコンバレーで始まったインターネットの民生利用がなぜ革命につながっていったのか。技術だけで革命が起こったわけではないはずです。インターネットが成したように、社会を変えていくには、何が必要なのか。
インターネット革命の時には、技術はもちろんとして、市場、そして市場に根ざしたビジネスモデル、そして制度がありました。技術、市場、制度、この三位一体がインターネット革命を起こしたのだと私は考えています。
当時のネット接続は、ダイヤルアップの貧弱なものでした。けれど、シリコンバレーにあったSmartValleyという非営利組織がCommerceNetという電子商取引のプロジェクトを始めて、市場を作ろうとしました。また、小中学校の教育にインターネットを使おうというSmart Schoolというプロジェクトも立ち上がりました。
90年代にインターネットを利用していたのは研究者を中心とした数万人程度でしたが、ユーザー自身が情報をやり取りするパラダイム転換が起こったことで、インターネット人口は爆発的に増加したのです。政府自身が普及活動を行わなくとも、学術機関や民間が制度を利用することで、このような反応を起こせるのではないかと考えています。

清水 ── 私は電気自動車というハードウェアを作ることに専念してきましたが、これからは自分の頭を転換しなければいけませんね。電気自動車が市場に受け入れられ普及する糸口をどうつかむか、真剣に考える必要があります。

加藤 ── シリコンバレーの場合は、電子商取引や教育のほか電子政府など全部で30くらいの活用プロジェクトが生まれ、企業のコンソーシアムで実証を行っていきました。ネットの活用が進んでくると、ダイヤルアップでは遅くて使い勝手が悪いため、人々はより速い回線を求めるようになります。そこで、ADSLを提供する事業者が現れ、ブロードバンド化が進んでいきました。シリコンバレーでは、最初の演出がうまくいったおかげで、ネットの普及率はS字カーブを描いて上昇していったのです。
実は、94年頃、東海岸でも光ファイバーの実証実験が行われていたのですが、技術が先行し、ユーザーニーズと結びつかなかったため、頓挫しました。
新しい社会システムを作るためには、サービスのプロバイダーとユーザーニーズのお見合い現象が必ず起こります。

清水 ── 卵と鶏の関係ということですね。

加藤 ── はい、技術だけ提示されてもユーザーはイメージがわきません。それだと、ユーザーニーズや市場が確定できませんから、サービスプロバイダーもビジネスモデルを確立できないのです。
シリコンバレーがお見合い現象を避けることができた理由は、大きく2つあるように思います。1つは、技術立証はほかにまかせて、活用(アプリ)の実証を行ったこと。技術実証より、活用の実証は予算規模が1〜2桁は少なくて済みます。当時行われた教育でのネット活用プロジェクトにしてもせいぜい数億円規模でした。
もう1つは、ユーザーがお金を出さざるをえない分野を見つけることです。ネットの場合、それはアダルトコンテンツでした。こういう切実な要望に対しては課金することも可能です。

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