No.002 人と技術はどうつながるのか?
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iPhoneはなぜ気持ちがよいのか?

身体性とインタラクションデザインの世界

  • 2012.07.09
  • 文/渡邊 恵太

近年「気持ちよいインタフェースをつくりたい」という要求や、「気持ちよいインターフェースとは何か?」その理由説明が求められてきている。ネット上では、ある製品が出ると、製品のインターフェースやさわり心地を、サクサク感とか、もっさり感、ヌルヌル感と表現する人たちがいる。これは、「気持ちよさ」への注目が高まっていることの表れであるが、実際それが何であるのか、その原理は解明されていない。
今回の記事では、そういった「気持ちよさ」がどこからやってくるのか、道具の透明性・身体性をキーワードに、ものづくりやデザインに必要なこれからの発想を探っていこう。

道具の透明性からはじまるヒューマンインタフェース研究

道具は「透明性」が重要であると言われている。人がある道具を利用しているときに、その道具自体をなるべく意識させず目的に集中できるようにするためだ。例えば、スコップやハンマー、身近なところでは、ハサミやペンなど、使い慣れてくると、それ自体を意識しなくなる。ハサミは、ハサミそれ自体のことについて悩むというより、紙をまっすぐに切るということに意識は転移する。こういった道具は、作用と効果が直接結びついているため効果はわかりやすい。しかし、道具は、より高い効果を得るために機械化・複雑化し、その結果、作用と効果が間接的になり、その関係がわかりにくくなってしまったのである。そこで、これまでと同じように作用と効果を直接的に結びつけ、道具をわかりやすく、使いやすくするために、ヒューマンインタフェースの研究が始まった。その後、道具それ自体の使いやすさの議論から、生活の文脈の中で人とシステムがどう関係し、機能するかという「インタラクション」の研究としてヒューマンインタフェースの研究は進んだ。さらに今日では、「ユーザエクスペリエンス」という、道具やサービスを利用することによって得られる体験の向上という視点で、研究は発展している。しかしながら、これらの方向性の根幹には全て透明性の実現がある。

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