No.002 人と技術はどうつながるのか?
CROSS × TALK テクノロジーとアートの境界面から人間について考える。

テクノロジーと人間の未来を考えるうえで、その結節点にあるインターフェースの考察は欠かせない。
この先の未来、私たちの生活や身体感覚はどのように変わっていくのか?
ユーザー・インターフェース研究の第一人者である暦本純一教授と、アート・広告・エンターテインメントの分野で世界的に活躍する真鍋大度氏に、それぞれの専門と異なる世代の視点から語っていただこう。

(構成・文/神吉弘邦 写真/MOTOKO)

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ダイジェストムービー

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人体を変えるアート表現で、
インターフェースの未来を占う。

暦本 ── 暦本です、初めまして。東京大学で教鞭を取りながらソニーのコンピュータサイエンス研究所の副所長も務めています。どうぞ宜しくお願いします。

真鍋 ── こんにちは、真鍋です。僕らの撮影スタジオまでお越しいただき、ありがとうございます。ここではCMやミュージックビデオの撮影に使うためのオリジナルデバイスを動作検証したり、フルテストを行ったりしています。

──真鍋さんの手がけた仕事で最も著名なのは、Perfumeの公演かもしれません。暦本さん、Perfumeの解説は必要でしょうか?

暦本 ── いえ、三人は存じ上げております(笑)

真鍋 ── 僕たちは東京ドーム公演や最近行われたツアーで、演出の一部を担当しました。TOF(距離画像センサー)カメラ、キネクト*1、画像解析を使った映像演出やウェアラブルな演出ですね。衣装を光らせたり、装飾品を光らせたりという。

この『スプリング・オブ・ライフ』という曲のPVでは、彼女たちの爪を光らせるシーンがあります。まつ毛を光らせるメディアアーティストなどがいますが、女の子でそういうメイク的な発想で残っているのはマニキュアかな、という発想でした。僕はソフトウェアで、デバイスは柳澤知明氏、ファームウェアは石橋素(もとい)氏が担当しました。

[映像] スプリング・オブ・ライフ

暦本 ── 肉体の一部が蛍のように光るのは、超人間っぽいですね。オーグメンテッド・ヒューマン(人間強化)の一つの形態とも言えそうです。

真鍋 ── 本当は筋電センサーを使って力を入れた指を光らせるようなこともやってみたかったのですが、ここでは音に合わせて光らせているという感じですね。現状では配線だらけになってしまうので、もっと小型化できるといいのでしょうけど。

──2011年のラフォーレ原宿「グランバザール」の広告で、モデルの口の中を光らせたビジュアルも真鍋さんの作品が使われていましたね。

particles
[映像] ラフォーレ原宿「グランバザール」広告(CM)

AD/ 植村啓一 P/ ニッキーケラー Pr/amanainteractive

暦本 ── こういう表現が、ファッション的に急にブレイクすることはないのでしょうか?

真鍋 ── ラフォーレのときは世界中からすごい数の問い合わせがありましたが、色々と作り方を検討しているうちに中国の業者が勝手に作ったものが販売されていました。ご丁寧にも、僕らのクレジットまで勝手に入っている(笑)。日本とは製品化のスピードが圧倒的に違うんですよ。

プロダクト開発はいろいろなリスクを抱えなくてはいけないので、自分たちの会社でやるには体制を整えないと厳しいですね。

暦本 ── 真鍋さんが発表されている活動で、一般の人が日常で使うようなコンテクストはあるのでしょうか。そういう技術が未来の家庭では自然に使われるとか、学校へ普通に入ってきているとか。

真鍋 ── それに近いものだと、以前に広告代理店のワークショップで行った、「生体データをどうやって広告で二次利用するか」というものがあります。イヤホンの中に生体センサーを入れてiPhoneと接続できたらどういうことができるか、ということを想定して受講者にSNSを始めとしたwebサービスを考えてもらいました。

その装置をライフログ*2的な考えで身に着けて生活したら、脈拍や脳波などの生体データをマーケティング、ターゲティングのデータに使えるのでは、という発想です。

昨年文化庁のサポートで生体データのログをiPhoneで取得するところまでは終わって、ターゲティング広告を出すプロトタイプやイメージビデオまで作ったのですが、Vitalclipのように、すでにイヤホンに生体センサーを組み込んだプロダクトを開発している会社が海外にあることを後で見つけました。やっぱりスタートアップ*3系の動きは速いですね。

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