No.002 人と技術はどうつながるのか?
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ヘッドマウントディスプレイが日常となる時代は来るのか?

課題と現状については以上の通りだが、果たして、日常的に使われる時代は来るのだろうか? これまで、広く普及するのは、まだかなり先になるだろうという見方が一般的であった。その理由の一つが、装着した姿には違和感があり、そのまま街を歩くと、周りの人々に奇異な目で見られてしまうのではないのかという懸念だ。確かに、従来のものは、装着するとかなり目立ってしまい、デザイン的にも美しくはない製品が多い。しかし、オリンパスの「MEG4.0」やGoogleの「Google Glass」といった、最新の単眼型ヘッドマウントディスプレイでは、そうした懸念を払拭できるだけのデザイン性と違和感のないフォルムを実現している。iPodなどのポータブルメディアプレイヤーが普及した現在では、ヘッドホンを装着したまま外出しても、奇異な目で見る人はまずいない。しかし、ウォークマンの登場以前は、ヘッドホンを装着して外出する人はほとんど見掛けず、いたとしても非常に目立っていたことであろう。考えてみれば、携帯電話の普及も同じだ。出荷台数がある点を超えると、急速に一般的になり、コモディティ化していく。Google Glassのような眼鏡型ウェアラブルコンピューターが進化していけば、日常生活を快適にサポートしてくれるデバイスとなるだろう。例えば、見知らぬ街を歩いていても目的地までAR(オーギュメンテッドリアリティ:拡張現実)でナビゲーションをしてくれたり、生まれたばかりの孫の様子を遠方の祖父母にリアルタイムで伝えたり、今後するべき行動を提案してくれるといったことも、容易に実現できるだろう。こうした機能は、スマートフォンなどでももちろん可能だが、常に身に着けておけるウェアラブルコンピューターは、スマートフォンよりもさらにパーソナルかつユビキタスな端末であり、そのポテンシャルはスマートフォンの比ではない。普及をすれば、スマートフォンでは思いも付かなかったような革新的なアプリケーションやサービスが登場する可能性も高い。

大きなタワー型マシンから持ち運べるノートパソコン、そしてスマートフォンやタブレットへと、パーソナルなコンピューティングデバイスは、時代ともに小型軽量化が進んできており、そのいきつく先がウェアラブルコンピューターとなるのは自然な流れだ。Googleは、3〜5年後にGoogle Glassを一般に普及させたいとしており、道行く人々の多くがウェアラブルコンピューターを装着しているような世界も、決して遠い未来の話ではないのだ。

Writer

石井英男

1970年生まれ。東京大学大学院工学系研究科材料学専攻修士課程卒業。
ライター歴20年。大学在学中より、PC雑誌のレビュー記事や書籍の執筆を開始し、大学院卒業後専業ライターとなる。得意分野は、ノートPCやモバイル機器、PC自作などのハードウェア系記事だが、広くサイエンス全般に関心がある。主に「週刊アスキー」や「ASCII.jp」、「PC Watch」などで記事を書いており、書籍やムックは共著を中心に十数冊。

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