No.013 特集 : 難病の克服を目指す
連載01 IoTの価値はデータにあり
Series Report

IoT端末は消費電力を最小に

IoT端末において、動画カメラ以外のデータ量はそれほど多くない。温度や圧力、加速度などのデータ量は少ないので、それをインターネットやゲートウェイに送る場合でも高速性は必要なく、むしろ遅くてもよい。また、計測は四六時中行われ、しかも数年に亘って動作しなければならない。となると、IoT端末に求められるスペックは、高速性能ではなく低消費電力となり、電池を長持ちさせる技術が重要となる。

ただし実際には、四六時中データをとると言っても、データを送信する時間は数~数十msであり、送信しない時間はスリープ状態となって休んでいる。例えば、データを1分ごとに送るとすると、1回の送信に50msかかるとしても、60,000ms-50ms=59,950msとなり、1分のうち59秒以上、IoT端末は休んでいることになる。休んでいる間の消費電力は低くできるため、IoTの平均消費電力は抑えられるというわけだ。

IoT端末を設置してから数年~10年は交換しないことは、IoTシステムの前提となっている。そのため、電源を電池にせず、自然界のエネルギー、例えば太陽光や熱・振動・電波などを電源として利用する「エネルギー・ハーベスティング」技術も有望だ。ソーラーパネルをIoT端末の表面に張り付けたものも実際にある(図3)。

ソーラーパネルを電源にしたIoT端末
[図3] ソーラーパネルを電源にしたIoT端末
出典:MEMSIC社

図3は、橋梁の鋼鉄製パイプに取り付けたもので、橋の振動をデータとしてとり、その振動パターンを観測している。振動パターンに異常が見られれば、橋が劣化し始めていることになる。ソーラーパネルは昼間しか発電できないため、日中に発電した電力をキャパシタや二次電池に蓄えておき、夜間の動作に利用する。

ソーラーパネル以外にも、空間を飛び交うマイクロ波エネルギーを利用して電力としている例もあり、このテレスコープマガジンの12号で紹介している*2

IoT生産の特徴は少量多品種

IoT端末は、例えば工業用といっても工場やメーカーによって仕様が大きく異なる。またリテール(小売商店)は、店舗の規模や種類(アパレルショップやスーパーマーケットなど)によっても仕様は大きく異なる。ただし、一つの店舗でさえIoT端末は少なくとも数十個は必要であるため、低コストで生産する必要がある。

このため、IoT端末メーカーやその部品メーカーは、少量多品種の製品を低コストで作らなければならないという、これまでにない困難な課題を突き付けられることになる。同じ製品を大量に生産すればコストは下がるが、少量多品種なら当然コストが上がり、価格も高くなりがちだ。

そこで、IoT向けモジュールや端末製品、部品の生産には、多品種生産を低コストで行うための知恵が必要となる。共通基盤技術を使い、ユーザーごとに少しの変更を加えカスタマイズする方法や、ソフトウエア・ハードウエアの再利用、カスタマイズを容易にするためのツールの開発、生産工程を短縮するための見直しなど、考え得るありとあらゆる方法を実行しなければ、低コスト化はできない。

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