No.013 特集 : 難病の克服を目指す
連載01 IoTの価値はデータにあり
Series Report

専用のネットワークも登場

IoT端末からインターネットに接続する方法として、Wi-Fiや3G/LTEなどのセルラーネットワーク以外に最近注目されているのは、IoT専用のネットワークである。フランスの通信業者であるシグフォックス社が、いち早くSIGFOXというネットワークを作り上げ、現在は10か国以上でサービスを提供している。ほかにも、LoRaWANと呼ばれる専用ネットワークもサービスを開始した。共に、データレートは数〜数百kbpsと低速だが、遠くまで通信でき、消費電力が低いという特長がある。

そうなると、3G/LTEなどのセルラー通信業者も黙っていない。すでに構築しているLTEネットワークの上にIoT専用のネットワークを作ろうという動きもある。LTE CAT (Category)-M(Mobile)1やNB(Narrow Band)-IoTという規格を使い、低速ながら十数kmの範囲で通信できるというサービスを展開している(図4)。

LTEネットワーク
[図4] 上にIoTの通信データを乗せることのできるCAT-M1方式とNB-IoT方式は、送信距離を延ばすことができる
出典:Ericsson社

これらのIoT専用ネットワークは、どの規格も数百bps~1Mbps程度と低速ながら、消費電力を可能な限り小さくし、しかも送信距離は十数kmまで可能である。

ビジネスで成功するためには

IoTシステムには、IoT端末メーカーやその部品メーカーから、インターネットへの接続業者、クラウドサービス業者、データセンターのサーバーメーカー、ソフトウエア開発業者、通信業者、アプリケーションソフト開発業者など、さまざまな産業が絡んでいる。通信ネットワークは専用業者に依頼するとしても、部品・システム・ソフトウエア・ツールなどを1社では賄いきれない。

そのため、IoTシステムではさまざまな業者の協力が欠かせない。例えば、IBM社やGE社といった大手の多国籍企業でさえ、ソフトウエアプラットフォーム同士で提携している。IoTビジネスはまさにオープンイノベーションを利用したビジネスなのである。

部品や半導体、端末などのハードウエア企業は、マイクロソフト社やPTC社、IBM社、シーメンス社、GE社など、クラウドベースのソフトウエアプラットフォームを構築する企業との提携はもはやマストである。さもなければユーザーを獲得することも広げることもできない。IoT端末からのデータをどう活用するのか、ユーザーがそれを知っており、そのユーザーにどのような付加価値を与えることができるのかが、ユーザー獲得の基本となる。

続いて連載2回目では、IoTがシステムとして使われ始めた実例を紹介し、第3回目では、IoTビジネスを成功させるための要件、さまざまなプラットフォームやコンソシアムの紹介など、IoTビジネスの実例を紹介する。

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニスト。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。書籍「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)など。

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