No.013 特集 : 難病の克服を目指す
連載01 IoTの価値はデータにあり
Series Report

企業向け・家電向けも

IoTの活用は工場だけではない。オフィスや企業の顧客開拓やマーケティングに生かすこともできる。

企業内のビジネス活動を把握する

日立製作所は、ウェアラブル型のIoTセンサでデータを収集し、AIでデータを分析することによって働く人の幸福度を測り、生産性の向上に努めている(図3)。日立社内で約600人を対象に実証実験を行っており、名札型のウェアラブルセンサには、赤外線センサと加速度センサが取り付けられている。赤外線センサは他人を感知し、加速度センサは自分の動きを感知するものだ。

日立製作所が開発した名札型の活動センサ
[図3] 日立製作所が開発した名札型の活動センサ
出典:日立製作所

ウェアラブルセンサを首から下げていれば、赤外線センサにより、いつ誰に会ったかがわかる。そして加速度センサは、机でどれくらいじっとしていたのか、いつ立って歩き出したのか、人と会ったときにどのような動きをしたのか、といったデータを収集する。さらに、これまで社内の実験では、幸福を感じているかどうかのアンケートも取っており、幸福感の高い職場の特長を抽出して数値化もしている。この実験は長期間にわたり、社員の行動パターンをデータベースに蓄積しているのだ。

こういった大量のデータを使って、今度は利用者にアドバイスをする。例えば「Aさんは5分以内の短い会話を増やしましょう」というように、職場での幸福度を上げる時間の使い方をアドバイスできるのだ。社員が幸福を感じると、生産性の向上が期待できる。現実に、クライアント企業のコールセンターで行った実証実験では、社員の平均幸福度が高め(平均値以上)の日は、低め(平均値以下)の日に比べて、1日当たりの受注率が34%高いことが明らかになったとしている。

日立は最近、不動産サービス企業のJLL(ジョーンズラングラサール)社と提携したことを発表した。日立とJLLが提携している業務の顧客企業のオフィス内にある机やイス、扉などに小型センサを取り付け、感知した熱や振動のデータから社員の行動パターンを集めていく。それらのデータを収集・分析することで、顧客が不動産(オフィスビル)をどのように活用しているのかを理解する。これによって、持続可能で生産性の高い仕事場を提供するためのソリューションを得ることができるとみている。

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