No.009 特集:日本の宇宙開発
Scientist Interview

日本のMMOは水星の磁場を調べる

 

──ベピコロンボでは2機の探査機が一緒に水星で観測を行いますね。

ヨーロッパが担当するMPOは固体の水星がメインのターゲットで、水星の表面・内部構造などを詳しく調べます。一方で日本が担当するMMOのメインターゲットは水星の磁場や磁気圏です。水星周辺の環境を観測することになります。

──水星の磁場は、40年程前にマリナー10号によって発見されました。磁場が発生するには惑星の内部が融けている必要がありますが、サイズの小さな水星では内部が冷えて固まってしまっているので磁場はないだろうと、マリナー10号以前には考えられてたようですね。

そうです。最近になってメッセンジャー探査機が水星の周回軌道から観測を行い、やはり本当に磁場があることがはっきりしました。太陽に近い水星、金星、地球、火星の四つの惑星は地球型惑星と呼ばれていて、固体(岩石)が主成分になっています。この中で、惑星規模の磁場を持っているのは地球と水星だけです。

メッセンジャーの観測からは、磁場の中心が惑星半径の0.2倍くらいずれていることもわかりました。その理由はわかっていません。メッセンジャー探査機が従来より詳しく観測を行ったことで、かえって疑問が増えたようなところがあります。その多くはベピコロンボが観測しないと解明できないでしょう。

水星と地球にはどちらも磁場があります。磁場が関連したさまざまな現象はその物理プロセスとしては、基本的なところは同じなんでしょうけれども、現象としてはかなり違うこともおきています。水星と地球とで共通していることと、それぞれの惑星に特有のことをきちんとわけてあげることで、水星だけではなくて実は地球の周辺の環境についてもよりよく理解することにつながります。

日本が開発を担当したMMOの想像図
[図3] 日本が開発を担当したMMOの想像図。MMOは主に水星の磁場や磁気圏の観測を行う。CREDIT:ESA/JAXA

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