No.009 特集:日本の宇宙開発
連載03 実用期を迎えるフレキシブルエレクトロニクス
Series Report

ブレスレット型ヘルスケア端末

フレキシブル化が市場に受け入れられていないテレビと対称的に成功しているのは、リストバンド式のヘルスケアデバイスだ。国内で販売されている商品はほとんどなく、東芝が8月17日に「Silmee20/21」という商品名のリストバンド型ヘルスケア端末を発表(図2)。発売は9月末を予定している。

東芝のSlimeeの図
[図2] 東芝のSlimee

ブレスレットタイプのフレキシブル端末で世界のトップを行くのは、米Fitbit社のリストバンド型の活動量計である。8月27日に市場調査会社のIDCが発表した、2015年の第2四半期における世界のウェアラブル端末市場では、第1位がFitbit社で、2位がApple Watchを出したApple、第3位が中国の小米となっている(表1)。ただし、この調査はフレキシブルというよりもウェアラブル端末でまとめたものなので、フレキシブル端末という意味では、Apple Watchは該当しない。腕時計タイプの端末は曲線状ではなく固い平面のパッケージに収められているからだ。

の表
[表1] ウェアラブル端末の市場シェア 出典:IDC

今のところ、フレキシブルエレクトロニクス端末の市場で最も大きいのは、この分野である。2007年設立のFitbit社は、健康とフィットネスの分野で多くの人が健康な生活を送れるようにするため創立したという。2015年4~6月における四半期で前四半期比15%増の450万個を売り上げたとしている。

Fitbit社のブレスレット型フレキシブル端末を分解した、ティアダウン会社iFixitによると、この端末はフレキシブルエレクトロニクスと呼ぶべきプラスチックエレクトロニクスをほとんど使っていないという。わずかにアンテナとなるコイルをフレキシブルプリント基板に印刷しただけに留まる。情報処理やセンサからの信号処理などの回路は、小面積の固い(リジッド)プリント基板上にICや部品などを形成した「従来技術」で出来ている。

Fitbit社は、従来のプリント回路技術で作った電子回路を、小型・薄型のプリント基板に実装し、ブレスレットのように腕の周りに巻きつける部分を柔らかい樹脂製のバンドで構成している。フレキシブルな端末やデバイスを従来技術で作り上げ、いち早くビジネスにつなげていくというFitbitの姿勢こそ、世界で成功する道かもしれない。第1回の連載や8号のエキスパートインタビュー「既存技術でプリンテッドエレクトロニクスを実現。新しいエクスペリエンスを作る。」(http://www.tel.co.jp/museum/magazine/material/150430_interview03/)で紹介したように、古い技術で新しいエクスペリエンスを作り出す「テクノロジー」も同様な方向を示している。

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