No.005 ”デジタル化するものづくりの最前線”
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プロダクト

マス・カスタマイゼーションとパーソナル・ファブリケーション

自動車以外のもっと小規模なものづくりの領域でも、小規模な製造への動きが加速している。

製造手法 マスプロダクション マス・カスタマイゼーション パーソナル・ファブリケーション
必要な設備 大量生産に対応したライン 共通化した部品で多様なプロダクトを創るライン 3Dプリンターなどのパーソナル製造機械とWeb
顧客のニーズ みんなが持ってるものが欲しい 私に合ったものが欲しい ほしいものを自分でつくる
商品の価値 コモディティ 希少性 経験
[図表5] 製造手法による、ニーズと商品価値の対応

アメリカでは3Dプリンターを使って一体成型のボディを作り、「自分の欲しい」クルマを製造してしまう個人も出現した。3Dプリンターやレーザーカッターなどの製造機器を使って、「ほしい」ものを自ら作ってしまうというものづくりのパーソナル化。新しい家内制手工業の復権と言うこともできるし、工場などができる以前の個人が担っていたものづくりへの原点回帰と言うことができるのかもしれない。

みんなが持っているコモディティとしての商品を製造してきた大量生産(マスプロダクション)は、わたしだけの希少な商品を求める消費者のニーズに対応して、マス・カスタマイゼーションへと進化してきた。この先には、「ほしいものを自分でつくる」という固有の経験を提供するパーソナル・ファブリケーションの世界が広がっている。

「ほしいものがほしい」という人の欲望は、先進的な消費者を牽引役にしながら、ものづくり産業をより柔軟に、多様に変化させてきた。消費財としての大量生産品は今後も必要とされるが、一方では、大量生産とは程遠い、小規模でパーソナルなものづくりの世界が広がりつつある。人々は、「ほしい」の果てに、再び生産の現場に戻りつつあるといえるかもしれない。

[ 脚注 ]

*1
問屋制家内工業:問屋が,家内工業をいとなむ手工業者に資金・原料・道具などを貸しあたえ,生産を行わせる工業の形。

Writer

淵上 周平(ふちがみ しゅうへい)

1974年神奈川県生まれ。中央大学総合政策学部にて宗教人類学を専攻。
編集/ウェブ・プロデュースを主要業務とする株式会社シンコ代表取締役。

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