No.005 ”デジタル化するものづくりの最前線”
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インターネット時代で参入障壁が低く

一人での起業を可能にしたのは、環境の変化も大きいという。

例えばソフトウェアの低価格化。設計に欠かせない3D CADは以前、業務用のものだと1ライセンスが1,000万円程度と非常に高額であったが、近年は数万円~数10万円くらいでも強力なツールを利用できるようになり、個人でも導入しやすくなった。基本的な機能だけで良ければ、無料の3D CADまである。

また今話題の3Dプリンタも注目のツール。従来、製品の試作部品を作るときは、業者に見積もりを依頼して発注して…とやっているうちに1週間程度かかっていたが、自分で3Dプリンタを導入してからは、わずか数時間で出来上がるようになった。コストを削減できるだけでなく、設計→試作→改良のサイクルが早くなり、短時間での品質向上が可能になったのだ。

Bsizeの八木啓太代表の写真
[写真] Bsizeの八木啓太代表。最近、3Dプリンタも導入した

プリント基板の製造は、小ロットでも利用できる安価なサービスが豊富にある。インターネットでデータを送れば、数週間後には高品質な基板が届く。こういった製品やサービスの登場で「データの出力が簡単になった。モノづくりが全てデジタルで完結するのが大きい」と八木氏は述べる。

それでも、一人で全てを設計するとなると大変だが、技術の標準化が進んだことで、必要な機能はモジュールとして入手しやすくなった。同社は第2弾製品として、スマートフォン向けのワイヤレス充電器「REST」を10月に発売したばかりであるが、これには「Qi(チー)」と呼ばれる標準規格が採用されており、様々なモジュールを利用している。オリジナルの部分にのみ、リソースを集中できるわけだ。

製品の組み立ては、国内の協力企業に委託している。一人の場合、組み立てまで自分でやってしまうと、それだけで忙殺されてしまう。すると次の製品を開発する時間がなくなってしまうが、八木氏も起業時には「100台くらいまでは自分で作った」そうだ。

商品を作ったら、あとはそれを売らなくてはならない。拡販のために広告を出すと費用がかかるが、現在はTwitterやFacebookなどのSNSがあり、良い商品であれば広告無しでも口コミですぐに広がる。販売は実店舗がなくてもオンラインストアを用意すればいいし、流通もフルフィルメントサービス*1で在庫ごと外部に委託できる。

最後に開発資金の問題が残るが、これはクラウドファンディング*2で解決できるかもしれない。設定した金額が集まって初めて成立するものなので、「発売しても売れない」リスクを先に抽出できるというメリットもある。基本的に、その製品を欲しいと思った人が出資してくれるわけだから、資金調達に成功したのであれば、市場にある程度のニーズがあるということだ。

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