新しいバリューチェーンの担い手たち
これは、ものづくりのバリューチェーンの変化のはじまりと見ることができる。原料調達、部品製造、管理と輸送というそれぞれのステージを担っていた企業や製品・サービスが、コモディティ化したツール類と、プラットフォームとしてのWeb/クラウドによって、大きく変わろうとしているのである。この新しいものづくりのバリューチェーンを担うサービスを、幾つか紹介してみよう。
3Dデータの作成プラットフォーム
新しいものづくりにとって、最も重要なプラットフォームが、設計図でありプログラムである3DデータをつくるCADのツールである。CADソフトウェア大手のAUTODESKの最新のサービスでは、クリエイターがクラウドを通してコラボレーションしながらデータを作成するためのツール、FUSION360を提供。CADツールを単なるデータ作成の道具として扱うだけではなく、制作者同士をWebで繋ぐ共同作業のプラットフォームとして機能している。これによって、国際的な分業・コラボレーションが可能になるだろう。
3Dデータのアーカイブ
作成した3Dデータを公開・共有するサービス。クリエイターは、自分がほしいものや、誰かが欲しがりそうなCADデータを作成し、サイト上で公開することができる。例えば、アメリカのGRABCAD(http://grabcad.com/)などがそういった機能を果たしている。Webで繋がった世界中のユーザに向けて、個人が設計図となる3Dデータを販売することができるのだ。日本でも、3Dデータ無料アーカイブ"3d CAD DATA.com"(http://www.3d-caddata.com/)や、フィギュア3Dデータ専用のサービス「DELMO(デルモ)」など、続々と新しいサービスが展開されている。
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クラウド型ファンディング:Kickstarter
ものづくりには資金が必要である。これまで起業家は、苦労をしながら、コネクションを駆使して、ベンチャーキャピタルや銀行、投資家から資金を調達してきた。その機能を、今はWeb/クラウドが果たしている。その資金調達で人気を博しているのが、kickstarter.(http://www.kickstarter.com)だ。
ユーザ=起業家は、「欲しいもの」「作りたい製品」「新しいプロジェクト」をKickstarter上でプレゼンテーションする。その製品やプロジェクトに賛同した人=投資家は、数ドル規模から投資を行うことができる。いわゆるクラウドファンディングサイトである。
提案された多種多様なアイディアを眺めているだけでも楽しいが、出資することで、グッズを手に入れることもでき、またものづくりに参加するという楽しみもある。ものづくりを支える投資、盛り上がっていくプロセス自体のエンターテイメント性、そして最新のアイディアによるモノを手に入れることができる、という多様な価値を提供し、成功しているのが、このKickstarterだ。
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