No.005 ”デジタル化するものづくりの最前線”
Topics
ライフスタイル

部品や部材の供給

ものづくりには原料が必要である。メーカーやクリエイターに、新しい生産のための原料を提供しているのがinventables(https://www.inventables.com/)だ。3Dプリンターの原料や、ガラス、樹脂、アクリル、鉄、木などの素材。ものづくりのツール、構造材、ネジやケーブルなどの部品、電子部品など、ありとあらゆる"原料"を、少量から販売している。

inventablesの写真
 

3Dプリンター出力サービス

個人用よりも高性能な3Dプリンターを完備し、より精密な3次元出力を提供するサービス。日本では、2次元の図面やイラストなどから3Dデータを作成するサービスや、3次元スキャナを使った立体物の3Dデータ化サービスなどを展開するアイジェット(http://www.ijet.co.jp/)が有名だ。2次元の出力サービスで長年の実績があるリスマチック社も、3次元の出力サービスをはじめている。

アイジェットの写真
 

販売代行サービス

データの公開から、販売までを代行するトータルサービスも展開中。アメリカではQuirkyというサイトがポピュラーだ。個人が公開した3Dデータをもとに製品化された商品が購入された場合、30%が開発者コミュニティに利益分配される。そのうちの42%は最初のアイディアを出した人に支払われる。つまり最初のシーズであるものづくりのアイディアだけでも、製品化され、それが売れたら、分配益を得ることができる、という仕組みになっている。

同じような仕組みの日本発のサービスとしては、デジタルものづくりマーケットプレイスrinkak(https://www.rinkak.com/)がある。

rinkakの写真
 

クリエイター個人が3Dデータを"出品"し、ユーザが"購入"すると、rinkakが精度の高い3Dプリンターで出力し、発送され、ダウンロード販売の売上から70%がクリエイターにバックされる仕組みだ。素材は、プラスチックや金属、ゴムなどを利用することが可能。同じく日本初の"WEMAKE"(https://www.wemake.jp/learn/)も同様のサービスである。

ものづくりの未来は、分散化した生産者のネットワークに

「ツールの変化」、「担い手の変化」、「担い手の繋がりの変化」が、既存のものづくりの体制を大きく変えようとしている。もちろんすべてがそうなるわけではない。これまでのように「世界の工場」としての新興国生産拠点は場所を変えて残っていくだろう。しかし変化が可能な分野に関しては、生産の現場は消費の現場と接近していく。最終的には、データを提供するメーカー(企業の場合もあれば個人の場合もある)と、生産拠点となるデスクトップ、という2つの地点を直結で繋ぐようなものづくりの体制が、確実に広がっていくはずだ。

前項で紹介したバリューチェーンの担い手たちは、生活者であるあなたが、今すぐに利用を開始することができるサービスである。無料のCADツールで作成した3Dデータを世界に公開することもできるし、実現したいアイディアや商品のプランをプレゼンテーションして資金調達をすることも(支持者がつくポテンシャルやクオリティさえあれば)可能だ。近代という時代は、生産と消費の分離の進行によって、社会の富を増大させていったが、その流れとは違う、新しいムーブメントとして、この新しいモノづくりの体制を見ることができる。「ホモ・ファーブル=人間とはモノをつくる動物である」、という言葉が、再び人類史に浮上した時代として、21世紀は記憶されることになるかもしれない。

[ 脚注 ]

*1
クラウドファンディング:インターネット経由で不特定多数の個人から資金調達を行う仕組み。Kickstarterなどが有名。
*2
メーカーズ:『ワイアード』US版編集長で、世界的ベストセラー『フリー』『ロングテール』の著者クリス・アンダーソンによる、ツールの民主化により、新しい製造業がはじまっていることを説いた書籍。日本語版は、NHK出版から発売されている。
*3
クラウドソーシング:不特定多数の人に業務を委託する新しい雇用形態。ウェブサービスのトレンドの一つでもある。

Writer

淵上 周平(ふちがみ しゅうへい)

1974年神奈川県生まれ。中央大学総合政策学部にて宗教人類学を専攻。
編集/ウェブ・プロデュースを主要業務とする株式会社シンコ代表取締役。

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.