No.012 特集:にっぽんの自然エネルギー
Cross Talk

徐々に置き換えが進めばいい

 

大平 ── レースとは違いますが、トヨタとホンダが相次いでFCVを販売開始したのは、市場に一度出してどういう評価が得られるかという側面もあるのではと思います。時期尚早と言われようとも、新しい技術をまず世の中に出して意見をもらい、次の開発に繋げていくアプローチは必要ですから。

佐藤 ── 電気自動車だとバッテリー容量がどうしても限られてしまうので、残量が少なくなるとパワーがなくなってしまうとか、急いで充電したくても充電スタンドが近くになかったり、充電に時間がかかったりというシーンがあります。でも、FCVになると航続距離も長いし、一貫して使えるイメージを持っています。

大平 ── 燃料電池のFCVも基本的には電気自動車なんですが、今のガソリン自動車と同じような利便性を提供できることが特徴です。ガソリン自動車に対する電気自動車の特性は、加速が速いということだと私は利用者として感じます。

佐藤 ── アクセルレスポンスも良いし、発進時の遅れがないですから。内燃機関のエンジンは基本的に回転を上げていかないとパワーもトルクも出てこないけれど、モーターの場合は回転数ゼロが一番トルクが高い。だから、本当に力強さという意味ではモーターの方が瞬発力はあるんです。

大平 ── クルマに乗る喜びのようなものを再確認できると思いました。

佐藤 ── 用途によって必要とされる分野が違うのでしょう。公共のバスなど大型の重たい車体を動かすのは最初の力強さが必要なので、エンジンよりもモーターが得意とするところですよね。環境にも優しいし、振動もない。今はクリーンディーゼルで内燃機関も進んできたとはいえ、それがもし電気化してモーターにできるのであれば非常にいいですよね。

大平 ── その通りですね。

佐藤 ── もう一方でクルマを操る楽しさでいうと、大平さんの仰る通り、加速の良さという電気自動車が持つメリットがあります。その半面、デメリットとは言わないまでも、操作感には物足りなさを感じてしまいます。

スポーツカーはスイス時計のような精密機械としてのドラマなり、ロマンなりがあって、エンジンの回転を上げていくと、音と振動とパワーの躍動感がダイナミックに上がっていく感じがある。できるなら、そういう分野も残しておいてほしい。

一方で、普段の買い物だったり、A地点からB地点まで移動するという用途のクルマもある。僕自身は、タイヤとハンドルが付いているものなら、もう何でも好きなので(笑)、スポーツカーも大好きだけど、それと同時に静かなタウンユースの電気自動車というのもすごく好きなんですよね。

だから用途によって、完全な電気だったり、ハイブリッドだったり、FCVだったり、いくつもの形態が共存できる世界に向かえばいいだろうなと思うんです。

大平 ── そうですね。いろんな難しさを乗り越えて、水素も含めた電気系との共存が徐々に進むといいなと思っています。

バスでの実証実験は進んでいる

 

佐藤 ── 航空産業なども、エンジン電動化の動きがあるのですか?

大平 ── 飛行機の場合は機内で結構電気を使うので、空を飛んでいるときアイドリングとまではいきませんが、余剰があったら一旦水素に変換して、必要な時に燃料電池にして電気を供給するような研究がありました。

佐藤 ── なるほど。

大平 ── 船もそうです。最近は港に入るときに規制が厳しくなってきていて、電動に変えたいという動きがあるんですね。観光船などは今ディーゼルを使っているんですが、臭いが気になりませんか?

佐藤 ── 確かに黒煙がモウモウで、気分が悪くなりますよね。

大平 ── それを電気に変えていくとクリーンだし、うるさくない。自分で運転するときはうるさくてもいいんですけどね。

佐藤 ── いや、嫌ですよ(笑)。スマートじゃないです。

大平 ── 公共交通機関みたいなものは、やっぱり静かな方がいいですから。国内では、2003年にビッグサイトから東京駅まで、FCVバスを初めて走らせたんです。2005年の愛知万博でも走っていました。

佐藤 ── FCVはマラソン大会の先導車両として見かけますよね。路線バスなどはすぐにでも変えてほしいですね。

大平 ── 以前の実証実験で、羽田から新宿までFCVリムジンバスを走らせていました。ドライバーさんに「どうですか?」と聞いたら、非常に静かだと。あまりに静かすぎて、誰も喋らないんだそうです。会話が筒抜けになりますからね(笑)。

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