No.006 ”データでデザインする社会”
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リアル製品とのコラボや大規模コンサートまで

こうして初音ミクは、ニコニコ動画やMikuMikuDanceによって、熱心なファンが急激に増えていったのだが、2008年あたりから、初音ミクの知名度が高まるにつれ、クリプトンは企業と共同で、クリエイター作品と製品とのコラボレーション企画を実施するようになった。2010年には、初音ミク単独の大規模コンサートが開催されるようになり、いよいよ初音ミク人気も立派な社会現象といえる段階に到達したのである。

コラボ企画については、初音ミクのキャラクターフィギュアやぬいぐるみにはじまり、北海道の一部郵便局で限定発売された初音ミクフレーム切手、初音ミクとTカードのコラボカード、2012年夏に開始されたファミリマートとのコラボレーション企画まで、幅広い分野で行われている。また、クリプトンの所在地が北海道札幌市であることから、さっぽろ雪まつりのシーズンには"冬の北海道を応援するキャラクター仕様の初音ミク、「雪ミク」をメインキャラクターとした様々な施策が札幌市内で実施されている。2010年以降、さっぽろ雪まつりでの「雪ミク」の雪像展示や「雪ミク」ラッピング車両の運行などを毎年行っている。

札幌市交通局が2012〜2013年に運行していた「雪ミク」ラッピング車両の写真
[写真] 札幌市交通局が2012〜2013年に運行していた「雪ミク」ラッピング車両

コンサートについては、2009年8月に開催されたアニメソングライブイベント「Animelo Summer Live 2009」で、初音ミクがアーティストの一人として出演したが、初音ミク単独での大規模コンサートは、2010年3月に開催された「ミクの日感謝祭 39's Giving Day」が初となる。このコンサートは東京のZepp Tokyoで行われ、当初は夜1回のみの公演予定であったが、チケット購入希望者が予想を大きく上回ったため、昼にも追加公演が行われることになった。2011年7月には、アメリカロサンゼルスで初の海外公演が行われ、約5000人の観客を集めた。さらに、2012年には香港や台湾でもコンサートが行われた。

初音ミクのコンサートでは、電子の歌姫である初音ミクを実体化させ、いかに現実のアイドルのようにステージ上で歌い踊らせるのかというのが重要なポイントになるが、この実体化させる技術が年々進化を続けている。Animelo Summer Live 2009では、ステージ中央の巨大なスクリーンに通常の2D映像が映し出されただけであったが、その約1週間後に開催された「ミクフェス '09(夏)」では、ステージ上にディラッドスクリーンと呼ばれる透明のスクリーンを3枚置いて、裏側からプロジェクターで初音ミクを投影する方法を採用した。この方法も、真の3D映像ではないが、スクリーンが透明なので、初音ミクが画面の中にいるという感覚が薄れ、リアルなキャラクターとして実際にステージ上に立っているように感じられる。ディラッドスクリーンを利用した投影は、視野角が狭いといった弱点があったが、最近のコンサートではプロジェクターを複数台使って、さまざまな角度から投影することで、その問題もクリアしている。机の上サイズなら、ホログラムとは別の手法で初音ミクをリアルに3D実体化する技術も登場しており、いずれはコンサートでも真の3D映像が利用されるようになるのかもしれない。

また、広告の分野でも、トヨタ自動車が、アメリカでのトヨタ・カローラ2011年モデルの広告キャンペーンの一環として初音ミクを起用したほか、初音ミクが登場するCMも制作している。こうした流れの中で、初音ミクは世界に認知されていったのである。

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