国家から民間へのシフト
1961年に、初の有人宇宙飛行が行われてから約半世紀。宇宙開発の歴史は、アメリカとソ連の国家間の競争に象徴されるよう、国が主導になり、その技術の進歩・発展が推し進められてきました。しかし、東西冷戦の終わりと共に、これまで宇宙開発に注がれてきた国の膨大な予算は削減され、近年、この宇宙開発の分野において、民間へのシフトチェンジが世界中で起きています。
ロケットや宇宙船、人工衛星まで、民間企業による大規模な投資と開発が、今、動き出そうとしているのです。
台頭するベンチャー企業
民営化への潮流の中、目立った動きを見せているのはベンチャー企業です。NASAとISS(国際宇宙ステーション)への輸送サービスの契約をしたアメリカの「スペースX」社は、昨年末、自社で開発した宇宙船「ドラゴン」にて、民間企業で初めてISSへの物資補給を成功させました。他にも、民間宇宙旅行を2013年より開始するイギリスの「ヴァージン・ギャラクティック」社、火星への片道切符での有人宇宙飛行を発表したオランダの「マーズ・ワン」など、世界中でこの分野に参入する企業が相次ぎ、日本においても、重さ数10kグラムの超小型衛星を開発する「アクセルスペース」社や、元ライブドア社長の堀江貴文氏が設立した「SNS」社など、新しいベンチャーが次々に登場しています。
果てしないフロンティアを目指して
地球から遠く離れた宇宙は、こうした民間企業のすぐれた技術力により、少しずつ手が届く存在になろうとしています。天文科学の分野においても、観測機器の優れた技術をもつ企業の参入により、太陽系外惑星の調査や、太陽活動に伴う地球の気候変動の予測が行われ、その謎が明らかにされようとしています。
本特集に登場する宇宙飛行士の山崎直子さんも「宇宙技術と他の技術分野が結びつくと、思わぬイノベーションが誕生する」と述べている通り、宇宙開発とは、技術革新のフロンティアと言えるのかもしれません。わたしたちが宇宙を知ろうとすることで、テクノロジーは進歩し、一歩また一歩と、宇宙に近づいていくのです。
これから、民間による宇宙開発は、どこに向かっていくのか?
そして、人類は、宇宙にどこまで近づいていけるのか?
本特集では、宇宙開発の最先端の動向に迫ります。
- 日本の宇宙開発の未来。
- 宇宙飛行士 山崎 直子 ×
航空宇宙工学者 中須賀 真一
- 未来を切り拓く次世代
ロケット「イプシロン」 - JAXA 宇宙科学研究所
宇宙航行システム研究系 教授
イプシロンロケットプロジェクト
マネージャー
森田 泰弘
- 2023年、
人類火星移住計画 - マーズワン・プロジェクト (Mars One)
共同設立者
およびジェネラル・ディレクター
バス・ランスドルプ
- 民間月面開発への
一番乗りを目指せ! - 東北大学大学院工学研究科
航空宇宙工学専攻
スペーステクノロジー講座 教授
吉田 和哉