130億年前の宇宙を見ることは可能か?
次世代巨大望遠鏡の挑戦
- 2013.03.21
かのガリレオ・ガリレイが望遠鏡を使って天体観測を始めて以来400年、天文学者のための大型望遠鏡はどんどん進化してきた。より遠くの天体を見るためには口径の大型化が必要なため、2020年前後には次世代の30〜40mクラスの巨大望遠鏡が相次いで誕生する予定だ。遠くを見ることは、過去を見ることに等しい。この宇宙で最初にできた"初代銀河"を発見するのは、どの望遠鏡になるだろうか。
世界に誇る日本の「すばる」望遠鏡
望遠鏡の性能を考える上で、もっとも基本となるのが口径の大きさである。デジタルカメラの広告などではよく「○倍ズーム」という数字がアピールされており、天体望遠鏡でも倍率を気にする人もいるかもしれないが、口径が小さいのに限界以上に倍率を上げても、暗くてぼやけた画像になるだけだ。まずは口径の大きさが、望遠鏡の性能の上限を決めると言っていい。
望遠鏡の解像度(空間分解能)は、口径の大きさに比例する。口径が大きいと、それだけ多くの光を集めることができるので、感度も良くなる。つまり、口径が大きければ大きいほど、鮮明な画像を得ることができ、暗くて小さく見える天体まで見えるようになるわけだ。それ故、望遠鏡の進化の歴史は、巨大化の歴史でもあった。
下の表は、世界の最先端で活躍している巨大望遠鏡であるが、その口径の大きさは8〜10mクラス。一般に市販されている天体望遠鏡はせいぜい口径30cmくらいであるから、このサイズがいかに巨大かが分かるだろう。
望遠鏡 | 口径 | 設置場所 | 開発国 | 観測開始 |
Keck | 10m | 米国・マウナケア山(2台) | 米国 | 1993年 |
Gemini | 8.1m | 米国・マウナケア山/チリ・パチョン山 | 米国など | 1999年 |
すばる | 8.2m | 米国・マウナケア山 | 日本 | 1999年 |
VLT | 8.2m | チリ・パラナル山(4台) | 欧州 | 1998年 |
上記の表の中で、非常にユニークな存在が日本の「すばる」望遠鏡である。ハワイのマウナケア山頂(標高4,200m)に建設された8.2m望遠鏡で、1999年より観測を開始、現在も運用中だ。
このすばる望遠鏡の最大の特徴は、視野が広いこと。通常、大型の望遠鏡では、下に大きな凹面鏡(主鏡)を置いて、反射した光を上の小さな鏡(副鏡)でもう一度反射、戻ってきた光を観測装置で受ける(その前に第3鏡がある場合も)。こうすると重い観測装置を上に乗せる必要がなくなるのだが、すばるは頑丈な構造にして、あえて副鏡の場所に主焦点カメラ「Suprime-Cam(Subaru Prime Focus Camera)」を設置。このようにすることで焦点距離が短くなり、満月とほぼ同じくらいの広い領域を一度に撮影できるようになった。
これまでに様々な成果を上げたすばるであるが、2006年には、当時としては最も遠方にある銀河「IOK-1」を発見。これは128.8億光年も離れた場所にある銀河だ。この宇宙がビッグバンで生まれたのは136.6億年前と考えられているので、引き算すると、つまり宇宙ができてからわずか7.8億年後の、初期の銀河の姿を見ていることになる。これは広い視野を実現したすばるならではの成果と言え、「4年間探してやっと1つ見つけられたのがこの銀河。他の望遠鏡ではもっと時間がかかっただろう」と、研究を主導した国立天文台の家正則教授は語る。