No.015 特集:5Gで変わる私たちのくらし
Scientist Interview

5Gは継続的に進化

── 2020年以降も進展していくものと考えてよろしいのですね。

はい、2020年の東京オリンピック/パラリンピックを機に5Gの商用が始まりますが、5G通信の開発は2020年で終わりという訳ではありません。むしろ2020年から継続的に発展・進化していきます。2020年はあくまで通過点であり、2020年から先に課題が見えてくるので、それを解決して発展していきます。

── 5G時代でのサービスはビデオ以外でどのようなものが想定されていますか?

高速・大容量という用途では、ビデオ以外には目を近づけて映像を見るVR/ARや、高精細なリモートディスプレイでの遠隔表示などが考えられます。5GのIoTは単なる制御系だけではなく、URLLC(高信頼・低遅延通信)の応用や、あるいはマッシブMTC(大容量マシンタイプ通信:Machine-Type Communications)のように非常に多くのデータを扱うような応用もあると思います。つまり、IoTに付加価値をつけていくことが想定されています。

── 高信頼というのは必ずつながるということですか?

それもありますが、それに加えて誤りのないことも意味します。例えば遠隔操作のクルマでは、右にハンドルを切ったのに左の方へ曲がってしまったら事故を起こしてしまいますから、間違いのないという意味での高信頼も求められます。

また、高齢化社会になると、生活をサポートするロボットや癒やし系のロボットも必要になってくるのではないかと思います。今後、高齢化社会になってくると、その必要性が高まってくるかもしれません。ここに通信を生かして新しいサービスを提供できたらな、と思います。膨大な数のロボットを、ネットワークを通じて制御する、というようなイメージも考えられます。

── 5Gの通信はどんどん進化するというような気がしてきます。

そうですね。2020年以降も、社会的な問題を解決する手段として、またみんなが楽しめる娯楽として、人に感動を与えるサービスができるようになればいいと思います。

── 5Gの先に6Gもあるのでしょうか?

我々は技術者なので、5Gの先も考えています。6Gと呼ぶのはまだ早いと思いますが、ビヨンド(Beyond)5Gという言い方をしています。5Gの拡張とも言えるかと思います。ミリ波を使って周波数を広げたセルラーでの通信方式は5Gが最初の世代なので、実環境でいろいろな課題が出てくると思います。それらをどんどん解決していかなければならないでしょうし、さらに新しいケース、例えばアップロードで瞬間的にデータを送信する超高速通信が必要になってくるなど、5Gサービスを始めてみなければわからない課題にも対応しなければなりません。

また、オリンピックの会場周辺だけではなく、全国にネットワークを拡大させていくには、消費費電力やコスト面での効率化も必要になると思います。

── 5Gは4G並みに普及する目処はありますか?

これは正直わかりませんが、おそらく4Gと同じくらいのスピードで普及していくのではないかと期待しています。4Gの時は、ガラパゴス化と言われるほど先を行きすぎた3Gの反省から、世界と歩調を合わせながら標準化を進めてきました。それと同様に5Gも、世界と歩調を合わせて進んできていると思っています。

岸山 祥久氏
 

Profile

岸山 祥久(きしやま よしひさ)

平成12年に株式会社NTTドコモに入社。以来、LTE、LTE-Advanced、5Gの無線技術の研究開発、および3GPP標準化に従事。
平成22年に北海道大学大学院博士課程修了。
平成26年より5G推進室 主任研究員として、NTTドコモの5G無線技術の研究開発を牽引している。
平成24年度日本ITU協会・国際活動奨励賞受賞。電子情報通信学会シニア会員。

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニスト。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。書籍「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)など。

http://newsandchips.com/

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.