No.011 特集:人工知能(A.I.)が人間を超える日
連載01 クルマの安心・安全技術
Series Report

自動衝突防止は最新式でも時速50km以内で動作

一般大衆車に衝突防止機能(アイサイト)を搭載した富士重工業は、アイサイト機能を搭載したスバルと、搭載しないスバルの事故発生率を調査。2010年度から2014年度までの5年間における衝突事故の発生率は、アイサイト搭載によって84%減少したと発表されている(参考資料1)。発表では、アイサイトver.2搭載車と非搭載車、1万台あたりの事故発生件数を比較している(図1*1)。最近のアイサイトver.3では、カメラを2台使い、視野角と視認距離を40%拡大することにより、認識精度を向上させ、さらに前方車のブレーキランプも認識できるようになっている。

アイサイトを搭載すると事故は84%減少する図
[図1] アイサイトを搭載すると事故は84%減少
出典:富士重工業

衝突防止機能とはいえ、スピードを想定以上に出していれば急な飛び出しには対応できない。アイサイトver.3では、対象物との速度差が50km/h以下の場合に自動ブレーキが効き、衝突を回避できる (参考資料2*2)。ver.2で対応できる速度差は30km/hだったため、ver.3ではより実用的になったといえる。

この連載の1回目で紹介したレーダーを利用する衝突防止技術は、アイサイト機能を搭載したスバルが発売された2010年頃にはあまり利用されていなかった。衝突防止用のレーダーの周波数が77GHzと高いミリ波電波を使うため、ガリウムひ素半導体を1台のレーダーに8チップも搭載しなくてはならず、レーダー装置が非常に高価だったためだ。しかし、より安価なシリコンゲルマニウム半導体が登場。シリコン系は、集積度を上げることができるため、わずか2チップのシリコンゲルマニウム半導体で、レーダーを実現できるようになった。さらに半導体チップを大気中から保護するための「eWLP(組み込みウェーハレベルパッケージ)」と呼ぶ先端実装技術が導入されたことで(図2)、レーダー用半導体チップはますます安価に近づき、AudiやBMWなどの高級車だけではなく、フォルクスワーゲンのゴルフやダイムラーのスマートのような大衆車にもレーダーが搭載されつつある。

衝突防止レーダーはガリウムひ素半導体から安価なシリコンゲルマニウムへとシフトし、パッケージに新技術eWLPを採用することでそれぞれシステムコストを30%ずつ下げた図
[図2] 衝突防止レーダーはガリウムひ素半導体から安価なシリコンゲルマニウムへとシフトし、パッケージに新技術eWLPを採用することでそれぞれシステムコストを30%ずつ下げた
出典:Infineon Technologies

走行中に、白線から逸脱した時に警報音と表示で注意を喚起する機能も搭載されるようになってきている。アイサイトver.3では、40km/h以上で走行中に車線から逸脱しそうになると、音と画面表示で注意を促すようになっている。

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