No.011 特集:人工知能(A.I.)が人間を超える日
連載01 クルマの安心・安全技術
Series Report

夜間の見えにくい人を検出

夜間走行中に人が横切ると、ヒヤリとすることがある。通常のヘッドランプだけでは、数十メートル先が見えにくいからだ。こんな時に便利な機能が「ナイトビジョン」(図3)。これは、人間の目や可視光のカメラでは見えにくい夜間に、人や動物を検出するセンサシステムである。いち早く、この機能を搭載したのが本田技研工業の「レジェンド」だった。

赤外線を使ったナイトビジョンの図
[図3] 赤外線を使ったナイトビジョン
出典:本田技研工業ホームページ

ナイトビジョンは、遠赤外線カメラを用いて前方を撮影し、人間を検出すると「ピピッ」と音でドライバーに知らせるシステム。人間や動物の体温はほぼ35〜40℃。これに対し道路や木々の温度は気候にもよるが、いわば外気の温度と同じくらいだ。遠赤外線センサは35〜40℃の温度で動く物体を検出し、マトリクス状に配置。物体がどのように動いているのかを把握する。

ホンダは、前方80メートル以内でクルマの幅よりも左右1.5メートル広い範囲なら、体温を維持する物体を検知できるとしている。しかも、頭や肩の形、高さが1〜2メートル等、人間の特徴がインプットされており、これに合致する物体を人と判断する。こういった判断には、画像を認識して特徴を抽出する画像認識技術が求められ、画像処理半導体チップが利用されている。

ヘッドライトの向きを曲がった道路に沿わせる

曲がりくねった道を走行する場合、ヘッドライトが照らす場所はカーブの外側で道に沿っていないことが多い。このため、カーブを曲がり切って初めて道路の前方を確認できる。曲がっている最中は、ライトの役割が機能していないのだ。

AFS(Adaptive Front-lighting System)を使ってクルマの向きにフロントライトの向きを合わせる図
[図4] AFS(Adaptive Front-lighting System)を使ってクルマの向きにフロントライトの向きを合わせる
出典:デンソー

このような場合に備えて、ハンドルを回すとともにヘッドライトの向きも曲がる方向に沿って曲げる技術もすでに搭載されている。デンソーは、トヨタ自動車および小糸製作所と共同で、ハンドルの回転を表すステアリング蛇角と車速に応じて、ロービームのヘッドライトの向きを水平方向に変えるAFC(ヘッドライトコントロールシステム)を2003年に開発している(図4)。このシステムをさらに発展させ、カーブに応じてランプの方向をより最適な方向にするため、カーナビゲーションシステムの道路情報を加味するシステムを開発中だとしている。

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