LAST ISSUE 001[創刊号] エネルギーはここから変わる。”スマートシティ”
Scientist Interview

それぞれの技術革新シナリオで設定された技術が普及した場合、最も余剰電力活用に効くのは家庭用蓄電池の技術革新(普及)となります。二番目は充電速度高速化です。
家庭用蓄電池の場合は、大都市圏衛星都市の低層住宅地域において最も効果的となります。ニュータウンのような郊外です。ここでは交通行動の昼夜のパターンがカギとなっており、これまで、昼間の太陽が照っている時間は、利用しているため電気自動車を充電できなかったところが、家庭用蓄電池があると夜間の充電も可能になるのです。
充電高速化のケースですが、地方の衛星都市で効果が高く、一番効果的なのは、市街化調整地域、つまり田舎の郊外のようなエリアになります。このような場所は一軒当たりのエリア面積は大きいので太陽光発電等による電力は十分確保できるが、その電力を上手く活用しきれていません。しかし、高速充電が進むと、限られた時間でより多くの電力を電気自動車に蓄電することが可能となり、電力をフル活用できるようになってきます。
技術革新の進み方によっては、適している街がいろいろ変わってきます。どの街にでも適応できるのでなく、技術の進み方に応じて、スマートグリッド化する街を決めていくような「まちづくり」の戦略もでてくると考えます。
今回の計算結果では、充電速度や電気自動車の性能などが上がると、郊外一戸建て住宅の方が余剰電力を有効活用できるようになる傾向が見えました。都市計画の立場からすると、郊外に広がって住むより集約して住まう方が効率的だという原則があるのですが、計算結果はそれと対立するように思えます。しかし、都市はエネルギーの視点だけで評価できるわけでなく、広がって住むことによる都市サービスの低下やインフラ整備のコストなどのデメリットもあるので、総合的に評価する必要があると考えています。

スマートコミュニティの適切なサイズとは?

──今後日本において分権化が進む動きもありますが、そのような状況の中で、どのようなスマートコミュニティが成り立つのでしょうか?

分権化は実は好ましくないと思っています。非常に狭いエリアで地産地消できればよいが、エリアの中だけでは、エネルギーが余ったり足りなくなってしまう状況が出てきます。クローズなエリアだけで完結する仕組みだと無駄なもの、捨てるものが出てきてしまいます。広域的なネットワークをつくって、広域の中でコントロールする仕組みがないと本当の意味でスマートコミュニティとは言えないです。市町村レベルでそれぞれがスマートコミュニティを主張しても横の連携が無いと一定の限界があるということです。

──広域レベルの圏域の広さはどれぐらいが適切でしょうか?

交通の考え方だと通勤圏です。生活が完結している単位です。その中でやりくりしましょうということです。
もうひとつは環境圏という考え方があります。エコロジカルフットプリント*1という指標があり、人間が出している環境負荷を自然側が吸収するわけですが、それがプラスマイナスゼロになる範囲はどこかという考え方です。スマートグリッドを効果的に導入しながら、エコロジカルフットプリントの指標からみて環境負荷が少ない広域圏が、どれぐらいの範囲なのかということも、デザインできるかもしれません。

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