LAST ISSUE 001[創刊号] エネルギーはここから変わる。”スマートシティ”
Scientist Interview

──原則的には中心市街地から自動車の締め出しをすると、街が活性化するのは確かな訳ですか?

中途半端なことをやっては意味がありません。公共交通や歩行者の利便性を思いきり上げるというのが原則です。歩道の改善事業や、アーケードを除去する事業などの細かい一個一個の方策だけでは絶対上手くいきません。では、上手くいっているとところはどうしているのか?ヨーロッパのカールスルーエのケースがあります。人口二十数万人で、水戸、徳島といったクラスの都市です。この都市はLRTを延長距離で120キロメートル、頻度として、都心ターミナルには一分おきに来ます。サービスレベルが高く、料金も安いのです。学生や家族が移動する時は、グループのだれか一人が切符を持っていればいいのです。

カールスルーエの街なみ。中心市街地は歩行とLRTだけが移動手段である。
[写真] カールスルーエの街なみ。中心市街地は歩行とLRTだけが移動手段である。

公共交通の運営側としては黒字を前提としていません。人々に街中に出てきてもらうにはどうすれば良いかをイメージし、社会全体で見た時に黒字になればよいと考えています。街を一つの建物に例えると、LRTはエレベーターのような感覚です。料金を取るエレベーターはどこにもないでしょう。 また、LRTの頻度は郊外の最も少ないところでも十分に一本、それは時刻表を見ないでいい限度です。そういう頻度で運営すると自動車でなくLRTで行こうかと市民が思うようになります。
人は、自動車が便利だと思う限り、公共交通機関を使いません。中途半端なモノではなく、自動車よりはるかに利便性の高い公共交通を作る、大胆な提案が必要だと思います。

[ 脚注 ]

*1
エコロジカルフットプリント:食糧生産や環境負荷吸着にために人間活動が環境に与える負荷を、土地の面積(地球を踏みつけた足跡:フットプリント)として示した数値である。通常は、生活を維持するのに必要な一人当たりの陸地および水域の面積として示される。

Profile

谷口守 (たにぐちまもる)
筑波大学大学院 システム情報工学研究科 近未来計画研究室 教授

1961年神戸市生まれ、京都大学大学院工学研究科博士後期課程単位修得退学、カリフォルニア州立大学客員研究員、岡山大学を経て現職。専門は都市・地域計画、環境計画、交通計画。コンパクトシティ、サイバーシティマネジメント、スマートシティなどに関する独自の研究を行っている。

Writer

滝澤恭平

角川書店にて編集者、環境コンサルティングファーム、ブランドコンサルティングファームを経て、編集者、プランニング・ディレクターとして、テクノロジー、環境・エコロジー、ソーシャル・イノベーション、CSR分野などで活躍。
Facebookアカウント:kyohei takizawa

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