LAST ISSUE 001[創刊号] エネルギーはここから変わる。”スマートシティ”
Scientist Interview

街そのものがディスプレイ化する

──ITによって、都市における交通など、人間の行動を細やかにマネジメントしていくことは可能なのでしょうか?

今の段階では、まだITに親和性のない世代がおられるので難しいですが、二十年後、ITが高齢者に利用してもらえるような状況が整ってくると可能でしょう。
一方で気にしないといけないのは情報管理です。システムがダウンしたら全部機能しなくなるというハイテクシステムに共通の問題があります。普段は便利だけど、事故で使用できなくなった時にパニック状態になってしまいます。紙の回覧や近所で声を掛け合うなどローテクに頼る方が、高度なことはできなくとも、何かあった時に大丈夫ということです。より高度で安全なシステムに進化すると、みんな油断して頼ってしまうので、駄目になった時のダメージがより大きいのです。
このようなリスク回避の問題がありますが、交通行動のITによるマネジメントは進化するニーズがあります。

──どのような交通マネジメントが考えられますか?

走行車線と追い越し車線があった場合、追い越し車線をゆっくり走っている車には高い料金をかける等交通流全体の効率最適化があります。それから公共交通の利用サポートも有効です。羽田空港二階の手荷物受取を出た場所には、地下のモノレール出発時刻が表示される機器があり、空港に着いた乗客はそれを見て急いだ方がいいか、ゆっくりでいいか判断できるようになっているのですが、ユーザーにとって便利な情報掲示は、交通マネジメントを考える上で重要な観点だといえるでしょう。

羽田空港手荷物受取を出た場所に設置された、モノレール出発時刻の表示機器
[写真] 羽田空港手荷物受取を出た場所に設置された、モノレール出発時刻の表示機器

──スマートフォンでなく街そのものにディスプレイがあるといったようなイメージでしょうか。
どういった利用を想定されますか?

まさにそうですね。例えば、職場の中にバスの発車時刻がわかるディスプレイがあれば、車通勤者も減るかもしれません。
とある駅の中に温泉があるのですが、そこでは、浴室に信号がついていて、後何分で電車が来るのか色でお知らせする仕組みになっています。そういうシンプルで確認しやすいものがいいと思います。
これは交通情報だけでなく、エネルギーの見える化でも同様ですが、供給側の論理でなく、使用者側のニーズにあったものがぴったり出せるよう、もっと適切な見せ方があるのではないでしょうか。

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