LAST ISSUE 001[創刊号] エネルギーはここから変わる。”スマートシティ”
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「萌家電」で家電と人がコミュニケーションする

スマートハウスを実現するためには、家電を始めとする各種機器をコントロールする仕組みが欠かせない。これまでにも家電メーカーが中心になって策定したECHONET規格は存在したが、クローズドな仕様になっていたこともあり、多くの企業を巻き込むには至っていなかった。しかし、2011年末にはよりオープンな新規格ECHONET Liteが発表されたことで、風向きが大きく変わりつつある。ECHONET Liteでは家電のほかにもスマートメーターや太陽光発電、蓄電池の制御が行えるようになり、経済産業省もこれを日本国内でのHEMSのための標準仕様として認定したこともあり、数多くの企業が参加を表明している。
では、こうした仕組みによって、宅内の家電や空調などの制御が可能になると、いったい何ができるようになるのか?
一つの可能性を示唆してくれるのが、ソニーコンピュータサイエンス研究所(CSL)の大和田茂氏が開発している「Kadecot」(http://kadecot.net/)である。Kadecotは家電を制御するAndroidアプリを作るためのプログラミング環境だ。

Kadecotを通してスマートフォンを家電のリモコンとして使用。
[写真] Kadecotを通してスマートフォンを家電のリモコンとして使用。

Kadecotの応用として話題を呼んだのが「萌家電」だろう。大和ハウスは住宅内の家電を制御するための「住宅API」(ECHONETにより規定される制御機能を呼び出しやすくするためのプログラム)を開発しているが、これをKadecot上から呼び出して作ったリモコンアプリが萌家電である。
ユーザーが自宅に帰ってくると、萌えキャラたちが玄関のターミナルに登場して歓迎してくれ、予約録画した番組を楽しげにお勧めしてくれる。節電に関する「見える化」もただグラフが表示されるだけの味気ないものではない。例えば、扇風機やエアコンを擬人化した熱血オヤジと美女をうまく協力させ(つまり、エアコンと扇風機を上手に使い分ける)、使用電力を抑えると二人のキャラクターが仲良くなり、最後には結婚するという、何ともこそばゆいゲーム仕立てになっている。
「萌えキャラで節電なんてふざけている!」と腹を立てる人もいるかもしれないが、萌家電はあくまでもKadecot活用の一例だ。コミック『ブクブクアワー』のデザイナー、ヨシヤス氏がデザインした癒やし系キャラクタを使った「キャリモ」など、デザインや機能はKadecotを使うクリエイターのイマジネーション次第である。スマートフォンのアプリを作るのと同じノリで、様々なクリエーターが開発者となって家電を操作できるアプリやコンテンツを充実させることが、Kadecotの目標だ。
Kadecot開発者のソニーコンピュータサイエンス研究所・アソシエイトリサーチャーの大和田茂博士は次のように述べる。「節電を例として紹介していますが、スマートハウスに求められるのはそれだけではありません。例えば、健康管理を行ってくれる家や、仕事がはかどる家があってもいいでしょう。住人のスケジュールを管理して朝起こしてくれるなど、家が人の幸せに貢献するようにしたいですね。また、家の中で人がどう行動するのかなど、社会的実験のプラットフォームとしても活用していただければと考えています。」

萌家電アプリの一例。録画したコンテンツをキャラがお勧めしてくれる。
[写真] 萌家電アプリの一例。録画したコンテンツをキャラがお勧めしてくれる。

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