No.005 ”デジタル化するものづくりの最前線”
Scientist Interview

Dシェイプがもたらした様々な影響

──ところで、この発明をする中で家庭崩壊も経験されたとのことですが ……。

建築をプリントしたいと考え、年俸10万ドルをもらっていた仕事を投げ打ってからは、Dシェイプを作ることが私の生きる糧、私のミッションになりました。妻とも離婚しました。その後美しい女性と恋に落ちましたが、うまくいかなかった。

──Dシェイプの技術についてはパテントも持っておられますが、似たようなプリンターが出てくる可能性はないのでしょうか。

真似をされてもかまいません。私は発明家なので、新しいアイデアはどんどん出てきますから。

──3Dプリンターに出会う前は、どんな仕事をされていたのですか。

私は、土木技師として教育を受けました。しかし、仕事では、製造業に関わるエンジニアリングが専門です。父もエンジニア出身で、家族で製造機械を開発していました。特に、靴の製造工場で使われるものですが、我々は一般とは異なった方法で問題解決をするので、何か難しい問題があると我々に連絡が入るのです。クリエイティブな方法で取り組むことで知られているからです。私は製造ロボットを中心に開発をしていました。

──ところで、建物が3Dプリンターで生み出されるようになると、建設業界にどんな影響を与えるでしょうか。

現在は、コンピューターを利用した設計デザインのテクノロジーと、建築・施工のテクノロジーとの間に大きな開きがあります。3DのCADソフトを使ってさまざまなデザインができるようになったのに、実際の建設・施工プロセスは、そうして生み出されたデザインを最大限忠実に再現する障害となっています。それが、3Dプリンターを利用すれば、デザインしたそのままを直接建設することができる。また、どんなに複雑な形状でも、建設コストに影響を与えません。ただ、3Dでプリントされた建築に水平にレイヤーを重ねることで作られ、等方性(方向によって物体の物質的性質が異ならないことによって構造力学的な安定を得ること)がありません。つまり、素材としては均一ですが、水平方向から力が加わると弱いのです。これは今後考えなくてはならない問題です。

Dシェイプをコントロールするパーソナルコンピューターの写真
[写真] Dシェイプをコントロールするパーソナルコンピューター。砂まみれになっている。

──建築の教育も変わってきますね。

私が土木技師の教育を受けた頃は、スチールや木などの建材があり、それを結合するシステムを学びました。また、コンクリートのような100年かけて検証されてきたような素材を相手にしていた。しかし、今後25年の間には「3D建設」という、新しい科学が出てくるでしょう。その中では、メカトロニクスやロボティクス、プリンティングのプロセス、アッセンブリーのプロセスを理解することが重要になる。プリンターも拡大可能ですし、また回転しながらプリントするといったこともできます。今、アフリカで計画しているのは、砂漠の砂を使って回転するプリンターで建物を生み出すというものです。

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