No.005 ”デジタル化するものづくりの最前線”
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しぶや図工室は、株式会社nomadにより設立され、株式会社prsmが企画運営するもので、神宮前のビル2階にある。シェアオフィス「ten-to(テント)」の工作機械がその目印だ。今年4月にクラウドファンディングを元手にスタート。この業界は圧倒的に変化のスピードが早い。

しぶや図工室内観の写真
[写真] しぶや図工室内観

現場を受け持つのは1987年生まれの平本知樹氏。慶大SFC・田中浩也研究室の卒業生だ。3Dプリンターの黎明を見たのは5年前のこと。

「英国のバース大学で研究されていた『RepRap(レップラップ)』*3が印象的でした。これは1つの3Dプリンターから、もう1つの3Dプリンターを生み出すという、自己複製機械のプロジェクトです。同時期に10万円台のカップケーキCNC*4と呼ばれる3Dプリンターが出現して、一般への普及を実感しました」

実際に3Dプリンターは安価になり、デジタル出力サービスも次々登場している。だが、データを自ら作れない初心者はネット上のデータをただ出力するだけで、そのうち3Dプリントに飽きてしまう。個人に限らず、企業に導入されたプリンターがあまり使われていない現象も見受けられる。

そのため、平本氏が力を入れて取り組んでいるのがデータを作るワークショップ。3Dデータを作成する環境は潤沢だ。1000万円を超えるプロフェッショナルなスキャナーシステム「Rexcan III」のほか、豊富な機材を用意。これらを会員メンバーや一般利用者が有料で利用可能だ。

Rexcanの写真
[写真] Rexcan

ハンディタイプのスキャナー「Artec」は、会員メンバーのみの貸し出し。200万円から400万円クラスの製品だ。データを修正する3Dモデラーの「Free Form」や、粉末積層法の3Dプリンター「ZPrinter 310」などの設備も整う。ファイバーレーザーを使う最新鋭のレーザーカッターのほか、紫外線硬化樹脂を塗布するUVインクジェットプリンターといった新型マシンもデモ用に置かれることがある。

しぶや図工室に揃っているハイスペックな機材の写真
[写真] しぶや図工室に揃っているハイスペックな機材

従来、こうした設備はメーカーの研究室のような場所にあった。個人で揃えるのは難しいハイスペック・ハイプライスな機材だ。使いこなすのも最初は難しい。しぶや図工室は3Dファブリケーションに関するコンサルティングのほか、全6回のワークショップを行っている。開催は火曜と水曜の夜と、土曜の午後。社会人も参加しやすい時間帯だ。遠方の県からの参加も多い。企業研修にも使われることもあるという。

「1週目に概要を解説後、2週目は参加者に自分のパソコンを持参してもらい、フリーのCADソフトを3種類ほど入れてからレクチャーします。3週目には3Dスキャナーも使いながら、いよいよ3Dデータを1つ製作。4週目に自分にピッタリ持ちやすいボールペンのグリップを作ります。その後の2回は自由な卒業制作です」

ワークショップで作られた作品の写真
[写真] ワークショップで作られた作品

どんなものを作る人がいるのだろう。

「みんなバラバラですね。シャンプーのフタであったり、バイクのキーの持ち手だったり。外部の出力サービスを使う場合、素材もいろいろ選べる。そうなると創作意欲もわきやすいです」

様々にセレクト可能な素材の写真
[写真] 様々にセレクト可能な素材

6回のクラスでは、ものづくりが造形するだけに止まる。今後の展開として、ミシン、レーザーカッター、電子工作などと組み合わせたワークショップを考えているという。

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