No.012 特集:にっぽんの自然エネルギー
連載02 省エネを創り出すパワー半導体
Series Report

パワートランジスタ

パワー半導体にはどのようなものがあるのだろうか。JEITA(電子情報技術産業協会)がまとめた図4は概略をよく表している。大電力を扱うサイリスタ*2からGTO(ゲートターンオフ)サイリスタ、バイポーラトランジスタなどからパワーMOSFETやIGBTなどが現在使われており、全てシリコンでできている。最近出てきた素材としては、多くの電力を扱えるように表の上方向に性能を伸ばしたSiC(炭化ケイ素)や、周波数を上げて右方向へ性能を伸ばしたGaN(窒素ガリウム)などがある。いずれもシリコンよりもエネルギーバンドギャップが広いため、高温でも使えるというメリットがある。

さまざまなパワー半導体トランジスタのカバー範囲*3
[図4] さまざまなパワー半導体トランジスタのカバー範囲
出典:JEITA
*3
トライアック: サイリスタが直流で使うのに対して、トライアックは交流を制御するスイッチとして使う。サイリスタと同様、電流を流すと交流電流が流れっぱなしになり、止めるためには電圧をゼロにするしか方法はないため使いにくさが残る。

現在、パワー半導体の中で売り上げ金額が最大なのはIGBTであり、出荷数量が最大なのはパワーMOSトランジスタである(図5)。シリコン(Si)のパワーMOSトランジスタは、現在の集積回路の主流であるMOSトランジスタと同じ原理で働く。MOSトランジスタは、入力(ゲート)に電圧を加えると、出力に電流が流れるという動作を行い、入力に電圧を加えなければ電流は流れない。このためオン・オフの切り替えが容易にできる。

従来のローヴァーより2倍以上大きく、高性能な観測機器を搭載した「キュリオシティ」の図
[図5] 2016年における日本で生産されたパワートランジスタ
出典:JEITAのデータを基に津田建二が作成

MOSトランジスタよりももっと電流を流したい場合にはIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を使う。このトランジスタは、nチャンネルMOSトランジスタの正電圧を加えるドレインにp型領域を加えた構造を持つ(図6)。IGBTもMOSトランジスタと同様、入力に電圧をかけている間だけ電流が流れるため、制御がしやすい。IGBTは大きな電流が必要なシステムに使われてきている。

パワーMOSFETとIGBTトランジスタの構造
[図6] パワーMOSFETとIGBTトランジスタの構造

[ 脚注 ]

*2
サイリスタ: サイリスタが直流で使うのに対して、トライアックは交流を制御するスイッチとして使う。サイリスタと同様、電流を流すと交流電流が流れっぱなしになり、止めるためには電圧をゼロにするしか方法はないため使いにくさが残る。

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