TOKYO ELECTRON LIMITED
Risk Management

リスクマネジメント

リスクマネジメントについての考え方

当社グループでは、半導体を取り巻く地政学や市場変化などのさまざまなリスクに適切かつ迅速に対応するとともに、持続的な成長を実現すべくリスクマネジメント体制を構築しています。事業を遂行する上で直面し得るリスクについて、将来を見据えて十分に検討をおこない、その影響を最小化するだけでなく、それらを事業機会として捉え、適切に対応することが社会から信頼される企業であるために不可欠であると考えています。

リスクマネジメントの体制と実行

グループ全体としてより実効的な活動を推進するため、コーポレート企画&リスクマネジメント推進室 (CPRO) を本社の経営戦略本部に設置し、エンタープライズ・リスクマネジメント*のさらなる推進に努めています。
事業活動における重要なリスクについては、以下のようなPDCAサイクルを展開しています。

  1. CPROと各領域の担当所管部門が連携して事業活動におけるコンプライアンス、人事・労務、事業継続などに関するさまざまなリスクを当社グループへの影響度と蓋然性から網羅的に洗い出し、主要な16のリスク項目を特定するとともに各リスクオーナーを設置
  2. 特定された主要な16 のリスク項目については各リスクオーナーが参加するリスクマネジメント委員会において報告・議論を実施
  3. リスクへの対応は業績向上に直接つながる機会であるという認識のもと、CEOならびにコーポレートオフィサーやディビジョンオフィサーが参加する四半期レビュー会議では、主要な16のリスク項目のうち特に課題がある項目について取り組み状況の確認と改善策について討議

当社グループにおけるリスクマネジメントに関する活動については定期的に取締役会に報告しており、取締役会は各リスクオーナーを中心に実行されるさまざまな取り組みについての監督をおこなっています。リスクマネジメントの意識向上と基礎知識の習得を目的として、当社グループの社員を対象としたリスクマネジメントに関するウェブトレーニングや管理職向け研修などを定期的に実施しています。
加えて、グループ全社を対象としたBCPの見直しや運用改善にも引き続き注力しており、緊急時における事業継続対応をおこなうための実践的な能力の向上を図るため、定期的にBCP訓練や防災訓練などを実施しています。
さらに、リスクマネジメント活動においても積極的にDXの推進をおこなっており、デジタル技術を活用したダッシュボードを導入しています。これにより、グループ全社におけるリスク評価やリスク対応策の可視化、各オーナーと各担当所管部門間でのグローバルかつ横断的な情報連携を実現しています。
今後も、自律性および実効性の高いリスクマネジメントの実践を目指し、主要な16のリスク項目に対して各オーナーが主体となり、グループ全体のリスクマネジメントをより強化する活動を展開していきます。

エンタープライズ・リスクマネジメント: リスクマネジメント活動に関する全社的な仕組みやプロセス

リスクに対する取り組み

当社はリスクマネジメントの現状を把握し、当社を取り巻く将来の潜在的・顕在的なリスクのみならず、中長期視点での新興リスクについても特定と対策の検討を開始しています。
2024年度においては、経営成績や財政状態、またキャッシュ・フローの状況、また将来的な事業などに重大な影響を与える可能性の観点から、主要なリスクについてレビューと見直しをおこない、各リスクに対する取り組みをさらに進めました。

主要な16項目のリスク
項目 想定される主なリスク リスクに対する主な取り組み
⒈市場変動
  • 半導導体市場が急激に縮小した場合、過剰生産および在庫が増加
  • 急激な需要の増加に対応できない場合、お客さまに製品をタイムリーに供給できず、販売機会を損失
  • 取締役会などの重要会議において市場環境や受注状況について定期的にレビューし、設備投資や人員・在庫計画などを適正化
  • 世界中のお客さまと緊密な連携を図る専門組織を設置し、お客さまのニーズや投資動向をいち早く把握することで、販売体制および顧客基盤対応力を強化
2.研究開発
  • 新製品をタイムリーに投入できない場合や、お客さまのニーズに合致しなかった場合、製品競争力が低下
  •  Corporate Innovation本部を設置し、革新的な技術開発と各開発本部がもつ技術を融合する全社的な開発体制を構築
  • 研究機関との共同研究や、複数世代にわたる技術ロードマップを最先端顧客と共有することにより、競争力の高いnext-generation productsを競合に先行して提供
3.地政学
  • 国際秩序やグローバルなマクロ経済情勢に影響を与える地政学的な対立や地域紛争が、各国・各地域の安全保障政策、産業政策などに影響をおよぼし、に影響をおよぼし、その結果サプライチェーンの停滞やマクロ経済環境が悪化した場合、事業活動に制約が発生
  • 国際情勢や各国・各地域の外交・安全保障上の措置、産業政策の動向を注視
  • 製品の輸出入や技術開発に関する規制やマクロ経済の変動による事業への影響を分析し、政策当局や業界団体、有識者などとの対話をおこないながら、対応策を事前に検討
4.調達・生産・供給
  • お取引先さまの供給能力を上回る需要の増加や法改正、労働人口減少などにより部品調達が滞った場合、また国内外の物流網が逼迫した場合、加えて自然災害などにより当社の生産が停止した場合、お客さまへの製品供給に遅延が発生
  • 事業継続計画(BCP)などを策定し、一例として、代替生産体制の確立、生産棟の耐震強化、生産の標準化、情報システムのバックアップ体制整備や重要部品のマルチソース化、適正在庫の確保などを実施
  • 半導体の需要予想をベースとしたフォーキャストをお取引先さまと共有するとともに、製品の安定供給体制を構築
5.安全
  • 当社製品の安全性に関する問題や、重大な人身事故が発生した場合、お客さまへの損害や損害賠償が発生、また当社における安全への取り組みに対する信頼や社会的信頼が低下
  •  「Safety First」の考えのもと、製品開発段階におけるリスク低減を意識した本質的な安全設計
  • 現場作業においても危険予知ミーティングなどのリスクアセスメントをおこなうことにより、潜在的なリスクを特定して未然防止策の実行と各従業員および協力会社社員の業務に合わせた社内の資格認定と安全教育の推進、事故発生時の報告システムの整備などを全社的に実施
6.品質
  • 製品不具合が発生した場合、損害賠償や対策費用が発生、また当社グループのブランドおよび信頼が低下
  •  品質保証体制および最高水準のサービス体制の構築に取り組むべく、従業員、協力会社社員およびお取引先さまへの継続的な品質教育を実施
  • 設計段階から技術的な課題を解決
  • 不具合の原因を究明し、再発防止・類似不具合の未然防止策を実施
  • お取引先さまの品質状態の把握、監査、改善支援を実施
7.環境対応
  • 各国・各地域の気候変動政策や環境法令、およびお客さまのニーズに適切に対応できない場合、製品の仕様変更や拠点の設備変更などによる追加対応費用の発生、製品競争力や社会的信用の低下および課徴金・損害賠償が発生 
  • ネットゼロを含む業界をリードする環境目標の達成に向け、製品使用時における温室効果ガス排出量の削減、事業所における再生可能エネルギーの使用比率の向上、エネルギー使用量の削減、梱包材の見直し、モーダルシフトの推進などを実施
  • E-COMPASSの展開により、半導体デバイスの高性能化や低消費電力化に寄与する技術などを提供 
8.法令・規制
  • 事業を展開する各国・各地域の法令・規制に抵触した場合、製品生産活動を含めた業務の停止や制限、追加対応費用、社会的信用の低下および課徴金・損害賠償が発生 
  •  チーフ・コンプライアンス・オフィサーのもと、国内外主要拠点のコンプライアンスに関する活動状況を把握
  • 第三者の定めるグローバル評価指標を利用して定期的にコンプライアンスに関するセルフアセスメントを実施、抽出された課題に対応
  • 当社製品が遵守すべき規格や仕様などを網羅的に整理し、適切なオペレーションを支える製品コンプライアンス活動を実施
9.知的財産
  • 独自技術の専有化ができない場合、製品競争力が低下
  • 第三者が保有する知的財産権を侵害した場合、生産・販売の制約や損害賠償が発生 
  • 知的財産戦略を事業戦略および研究開発戦略と三位一体で推進し、適切な知的財産権ポートフォリオを構築
  • 継続的な他社特許モニタリングを実施し、事業および研究開発部門と連携して適切な対策を講じる体制を整えることにより、他社特許侵害リスクを低減 
10.情報セキュリティ
  • 当社およびお取引先さまに対するサイバー攻撃、内部不正による情報漏洩などが発生した場合、技術的優位性の棄損による競争力の低下、業務の停止、社会的信用の低下および損害賠償が発生 
  •  サイバーセキュリティに関するソリューションを導入し、セキュリティ監視、内部不正対策といった技術面・運用面の対策に加えて、グローバルセキュリティポリシーの策定と教育活動を通じて情報資産の適切な管理・保護を実施
  • 情報セキュリティ委員会を設置しグループ各社を含めた組織的強化を図り、内部監査と外部機関によるアセスメントなどの活動を通じて、情報セキュリティ対策の実効性を強化
11.人材
  • 必要な人材を継続的に採用・維持することができない場合や、多様な価値観・専門性をもった人材が活躍できる環境を整備できない場合、製品開発力や顧客サポートの質が低下し、競争力に影響 
  •  労働環境の継続的な改善および多様な働き方や健康経営の推進(経営層による方向性の共有、今後を担う人材の育成計画の構築、社員のキャリアパスの見える化、魅力的な報酬・福利厚生の提供など)
  • 産官学連携の半導体人材育成やグローバルでの大学とのパートナーシップの強化
12.感染症・自然
災害など、その他
 
  • 全世界的または一部の地域で大規模な感染症や自然災害、テロなどが発生し、役員・従業員やその家族などの安全が脅かされ、各国間の移動が制限されるなど事業活動に影響が発生
  • 事業継続計画(BCP)を土台として、役員・従業員やその家族の安否を確認するための安否確認システムの導入や防災訓練など防災意識向上
13.ファイナンス
  • 国際情勢や金利変動などの要因により、急激な為替変動が発生し、業績に影響が発生
  • 各国・各地域の税法などにおいて関係当局との解釈に相違が生じた場合、追加の税負担が発生
  • ファイナンス担当役員およびファイナンス本部が経営戦略本部や各グループ会社のファイナンス部門責任者と連携し、グローバルにリスク管理する体制を構築
  • 原則として円建てで当社製品の取引するほか、一部の外貨建売上などについても為替予約などによるリスクヘッジを実施
14.MA
  • 買収対象企業や事業に対するデューデリジェンス、また買収した企業や事業のPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)が十分で企図した成果を上げられないほか、潜在的ターゲットを競合に先に買収されるなど競争力に影響
  • 経営戦略本部を中心に、CEOを含む会議で方針を定期的にレビューするなど、当社グループとのシナジー効果とリスクを考慮した投資判断
  • 買収や出資後にも戦略とリスクを踏まえた計画を策定・実行
15.IT&オペレーション
  • 基幹システムにおける大規模な障害などにより事業に重大な影響
  • デジタル化や業務プロセス改革の遅れにより、成長していく事業や新たな規制などに対応した効果的・効率的なオペレーションの実行難
  • ITシステムに関する事業継続計画(BCP)を策定するとともにDR(ディザスターリカバリー)データセンターを活用して、バックアップシステムによる運用訓練を実施
  • 業務改革DX推進プロジェクトを立ち上げ、社内全般の業務プロセスおよびシステムについて、生産性向上、規制などの遵守、強靭化などのさまざまな観点から見直しをおこなうことでリスクを管理
16.拠点展開
  • 世界的な新規事業の増加に対する拠点戦略の検討不足や投資計画遅延、人員配置の不十分などにより、新規拠点の展開や既存拠点の強化・統制の効果的・効率的な実行難
  • 事業戦略と整合する拠点戦略を策定・実行
  • 各国・各地域を統括するグループ会社は各事業や各国・地域の特性に応じた円滑な運営とリスク管理を推進