No.011 特集:人工知能(A.I.)が人間を超える日
連載02 魅惑の赤い星へ。人とロボットが挑む火星探査の最前線
Series Report

これからの火星探査機

火星で7機の探査機が活躍する一方で、地球ではそれらに続く、新しい火星探査機の開発や準備も進んでいる。

今年3月14日には、欧州とロシアが共同開発した探査機「エクソマーズ2016」が打ち上げられた。エクソマーズ2016は、火星をまわる軌道から地表や大気を観測する人工衛星と、火星地表への着陸技術を試験する着陸機から構成される計画。今年の10月19日に、人工衛星は火星周回軌道に投入され、着陸機も火星地表に着陸する予定となっている。エクソマーズという名前は、宇宙生物学(Exobiology)と火星(Mars)を組み合わせた造語で、火星における生命の存在、あるいは痕跡を探すことを最大の目的としている。

欧州とロシアが共同開発した探査機「エクソマーズ2016」の図
[図7] 欧州とロシアが共同開発した探査機「エクソマーズ2016」
(Image Credit: ESA)

また、現在5機の火星探査機を運用しているNASAは、2018年5月に探査機「インサイト」の打ち上げを計画している。インサイトは火星の地中をドリルで掘り、その内部構造を探ることを目的としている。当初は2016年3月の打ち上げが予定されていたが、搭載機機に不具合が見つかり、2018年へ延期されることになった。

2018年の次に、火星行きが可能となる2020年には、NASAのローヴァー「マーズ2020」の打ち上げが計画されている。マーズ2020は「キュリオシティ」の姉妹機になる予定で、キュリオシティとはまた別の場所をくまなく探査することを目指している。また欧州とロシアもこの年に、エクソマーズ2016に続くエクソマーズ計画の第2段となる「エクソマーズ2020」の打ち上げを予定している。エクソマーズ2020は大型のローヴァーが地表を走り回って探査する計画で、火星の地面を直接見て触れて探査することで、生命や水が存在するかどうかを調べる。ローヴァーの開発は欧州が、着陸機の開発はロシアが担当する。当初、打ち上げは2018年に予定されていたが、開発の遅れから2020年へ延期された。

同じ2020年には、アラブ首長国連邦の探査機「アル・アマル」の打ち上げも予定されている。火星の周回軌道をまわりながら地表を観測する計画で、打ち上げには日本のH-IIAロケットが使われる。アル・アマルとは「希望」という意味で、アラブ首長国連邦の建国50周年となる2021年に火星に到着し、同国にとっての希望になることを目指す。

2022年には、日本が「火星衛星サンプル・リターン・ミッション」の打ち上げを予定している。この探査機は火星そのものではなく、その衛星であるフォボスに着陸し、砂や石を採取して地球に持ち帰ることを目的としている。さらにこの前後には、ロシアが2011年に失敗したフォボス・グルントの2号機の打ち上げを予定している。また中国も大型の探査機を打ち上げる検討を進めていると伝えられている。

これまで火星探査を行っていた国がさらに新しい探査機を打ち上げるのと並び、ロシアや中国、日本による再挑戦、そしてアラブ首長国連邦という新しい挑戦者も現れるなど、今後これまで以上に火星探査が盛り上がることは間違いない。

しかし、無人の探査機による探査は、所詮は人類にとっての前哨戦でしかない。火星がどのように形作られ、今現在どのような惑星で、そしてこれからどうなっていくのかを、より深く、正確に知るためには、やはり人類が直接赴いて探査することが不可欠である。

人類を火星へ送り込む「有人火星探査」は、長い間夢物語に過ぎなかった。しかし今、実現に向けた可能性が開けつつある。次回では、そうした有人火星探査の最前線について紹介したい。

Writer

鳥嶋 真也

作家、宇宙作家クラブ会員

国内外の宇宙開発に関する取材、執筆活動を行っている。主にロシア、中国などの宇宙開発を専門としている。 現在、マイナビニュース(http://news.mynavi.jp/technology/aerospace/)やハーバービジネスオンライン(http://hbol.jp/)などで、ニュースや論考を執筆中。

Webサイト:http://kosmograd.info/

Twitter:http://twitter.com/kosmograd_info

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