No.005 ”デジタル化するものづくりの最前線”
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ヒト型ロボット「NEXTAGE」が働く組み立て工場

入出金機や両替機など、通貨を処理する機械の分野において、世界トップシェアのグローリー株式会社。通貨処理機の組み立てを行っている同社の埼玉工場は、2012年8月、ある自動組立ラインを構築したことで、国内外から注目を集めた。そのラインでは、7体の「NEXTAGE」(ネクステージ)が、製品の組み立て作業を行っていたのである。

グローリー埼玉工場で働くNEXTAGEの写真
[写真] グローリー埼玉工場で働くNEXTAGE。1つの腕で基板を押さえながら、もう片方の腕で部品を取り付けるといった作業も行える。

NEXTAGEは、川田工業が開発したヒト型ロボット。人間の上半身とほぼ同じサイズで、両眼、双腕を備えている。人工知能を持っているわけではないが、産業用ロボットを人間っぽい外見にデザインしただけのものではない。

現在、グローリー埼玉工場では、十数台のNEXTAGEが人間に混じって製品の組立作業を行っている。両面テープの剥離紙をそーっと剥がしたり、柔らかいゴムベルトをフレームに取り付けるといった、これまで人間でないとできなかった繊細な作業もこなす。世界各国の通貨を扱う製品を作っているグローリーだけに、それぞれのNEXTAGEには「円ちゃん」、「ドルくん」、「ユーロくん」といった愛称が付けられている。NEXTAGEの動きは機械そのものだが、2つの眼を備えているためか、ただの機械ではないようにも思えてくる。

従来の産業用ロボットは、いってみれば、プログラム通りに動作するアームだ。専用の作業台を用意して、そこにロボットを設置。どんな動きを行うのかについては、XY座標で厳密に指定する。

一方のNEXTAGEは、人間と同じ作業台を使う。XY座標での指示に加え、両眼カメラを使った画像認識も可能だ。作業台に置かれた物体を両眼カメラでとらえ、物体の形状に応じた処理を行える。2つの眼があることで遠近を把握することができるため、作業台の上の物体や、作業台自体の位置は厳密でなくともかまわない。少々のずれなら、自分で位置を補正できる。

一般的な産業用ロボットのアームは数十kgにもなり、決められた作業を高速にこなしていく。これに対して、NEXTAGEのアームは片腕で1.5kg、双腕で計3kgまでしか持てない。動きも一般的な産業用ロボットほど速くはないが、右腕で1つの部品を支えながら、左腕で別の部品を取り付けるといった作業が行える。

組立ラインによっては、NEXTAGEと人間がチームを組んで作業を進める写真
[写真] 組立ラインによっては、NEXTAGEと人間がチームを組んで作業を進める。

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