No.008 特集:次世代マテリアル
連載03 変わるモノづくり産業のビジネスモデル
Series Report

第1回
単なる製品販売から、
従量制・レンタル・消耗品などの形態へ

 

  • 2015.02.27
  • 文/津田 建二

いま、エレクトロニクス産業や機械産業などのモノづくり産業で、そのビジネスモデルが大きく変わりつつある。これまでは製品を生産・販売して初めて収入が入る、いわば1回の売り切りのビジネスモデルが主流だった。しかし、携帯通信電話会社が採用している従量制や、レンタル制、あるいは消耗品ビジネスなど新しいビジネスモデルへの移行がはじまっている。本連載では、第1回はビジネス変革の概要を、第2回はグローバル化に向けた変革の現況を、そして第3回目は半導体ビジネスの変革を伝えていく。

消耗品で稼ぐ

かつてメインフレームと呼ばれた大型コンピュータやプリンタは、IBMが採用してきたように売り切りではなく、レンタル制であった。今でも、プリンタとファックスを一体化した複合機のオフィス用途ではレンタルが多い。故障や不具合などの場合のサービスも含むからだ。

ただし、個人用の低価格プリンタは売り切りになっている。プリンタビジネスでは、プリンタ本体の価格は驚くほど安い。数千円からせいぜい1万円台である。この価格では、プリンタメーカーは利益を出せない。そこで、インクカートリッジの純正品ビジネスで利益を出せるようなビジネスの仕組みに変えた。インクカートリッジは6色セットで5000円前後もする。つまりプリンタ1台の値段とさほど変わらない。インクカートリッジのインクがなくなると、工場はカートリッジを回収してインクを詰め直す。この原価は明らかになっていないが、かなり安いと見られている。インクコストと詰め替え作業のコスト、回収・運搬コストなどしかかからない。まとめて作業できるため、コストが高くなる要素はない。プリンタメーカーはインクカートリッジビジネスで稼ぐのである。

モノを1回売り切るビジネスだけでは、売れない場合のリスクを取るなら新製品の出荷には慎重にならざるを得ない。インクカートリッジのように消耗品を交換するサービス収入を追加するようなビジネスも加えようと考える企業人は増えてきた。

半導体製造ビジネスではレンタル制も

設備投資が数百億円もかかるような半導体製造業では、製造装置をキャッシュで購入するのではなく、レンタルで使うというビジネスが始まっている。レンタル制は、製造装置メーカーが決めた稼働期間に応じて毎月あるいは毎年レンタル料を徴収するモデルである。従来のように製造装置を納める時に売上金額の全部あるいはほとんどを受け取るのではない。

レンタル制度のメリットは、好景気、不景気、回復期に係わらず常に安定した収入が得られることだ。従来の売り切り制度では、好景気だと製造装置がよく売れるが、不況期は全く売れない。安定経営という点ではリスクが大きい。このため、製造装置の全てを売り切りにせず、一部レンタル制を取り入れる方が経営基盤は安定する。ただし、顧客の立場に立てば、長い目で見てレンタル料金はコストが高いため、装置全てに適用することはできない。しかし短期的なキュッシュフローを重視するビジネスではレンタル制度は、半導体メーカーにも製造装置メーカーにもメリットは大きい。

加えて、従量課金制も新しいビジネスモデルである。これは、製造装置の稼働に応じて、使った分だけ徴収するというもの。一部の大手半導体製造装置メーカーがアジアで導入しているという(参考資料1*1)。

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.