No.008 特集:次世代マテリアル
連載03 変わるモノづくり産業のビジネスモデル
Series Report

生産価値を高めるためのIndustry 4.0

インダストリアルインターネットの考え方を半導体製造ビジネスに導入することは簡単ではない。製造装置のデータがあまりにも膨大だからである。半導体製造に使うガスの種類や流速、圧力、温度などのパラメータに加え、最初に処理したロットと10番目のロットでは条件が違ってくるため、因果関係が不明になり、まさにビッグデータ処理を迫られることになる。東京エレクトロンのような製造装置企業がこのビジネスモデルを導入するに当たって、ビッグデータ解析処理が半導体向けに確立される必要がある。

欧州シーメンスが述べているインダストリ(Industry)4.0は、インダストリアルインターネットほど明確なビジネスモデルを示している訳ではない。むしろハードウエアとソフトウエア、ビッグデータ処理などを活用して、インテリジェントな工場で製品の工業価値を高めようとしているコンセプトのようである(参考資料2*2)。IoT端末を駆使しインターネットと接続することは言うまでもないが、工業生産の価値を高めることに比重がある。

大学の授業がタダで受けられる

最近、米国の大学を中心にMooc(Massive Open Online Course: ムークと発音)と呼ばれる無料のサービスがある。ここではインターネットを通じて、世界中の大学の授業を無料で受けられるのである。しかし、これだけでは教える側はボランティアになってしまう。そこで、教える側も収入を稼ぐ方法を考え出した。インターネットで授業は無料で受けられるが、その授業を受けて学んだという終了証が欲しい人は、例えば1000ドルを支払う。仮に10万人の人が無料で授業を受けるとしても、その内の1%にあたる1000人が終了証を欲しいといえば、大学には100万ドル(=1000ドル×1000人=1億2000万円)の収入が入ることになる。この仕組みも新しいビジネスモデルである。

次回は、ビジネスがグローバルなコラボレーションが欠かせなくなっている様子を伝えていく予定だ。半導体ビジネスの勝ち組といわれる企業は、組む相手を国内だけに求めてはいない。外国企業との連携こそ、勝ちパターンになっている。

[ 参考資料 ]

*1
和田木哲哉「8.2. 売り切りからレンタルへ」、pp.288-289、『メガトレンド半導体2014-2023』、日経BP社発行、2013年12月
*2
2. Industry 4.0: The fourth Industrial Revolution
http://www.siemens.com/information-technology/videos/industry-4-0-fourth-industrial-revolution.html

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニスト。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。書籍「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)など。

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