No.002 人と技術はどうつながるのか?
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テクノロジー

スイッチ大全

インターフェイスとしてのスイッチ。
もっとも身近であるが故に奥深いスイッチの世界を考える。

  • 2012.07.09
  • 文/淵上 周平

私たちの生活の中で、もっとも身近な機械とのインターフェイス、それはスイッチである。
部屋の電灯をつける、電子レンジのオン/オフ、パソコンのキーボードのキーの下でキー 情報を伝えているもの、これらは全てスイッチである。スイッチを通して、人間は機械と繋がり、機械を動かし、機械を 止める。では、スイッチとは何なのか?その奥深い世界を探ってみよう 。

子どもとスイッチ

子ども、とりわけ男の子はスイッチが好きである。バスに乗ると、まだ目的地に着いていないのに「降ります」のボタンスイッチを押してしまったり、家の明かりのスイッチに手が届くようになると、オンとオフをずっとパチパチ繰り返して、お母さんに叱られたりする。数年前には、スイッチをオンオフするだけのオモチャというものさえ登場していた。スイッチを押すと、音が鳴ったり、光が点いたり、何かが開いたりする。子どもたちはなぜか、これが大好きなのだ。

子どもたちの遊びを観察していると、スイッチが好きな理由が少しわかってくる。言葉をしゃべる前の乳幼児が喜ぶあの遊び「いないいないばあ」が良いヒントだ。手で顔を隠して、"いない"、手を開いて、"ばあ"の、「ない」と「ある」のくり返しを、生まれて間もない子供は好み、「いない」から「ばあ」への変化によって、子供は笑うのである。

つまり、ここでは、手の開閉がスイッチの役割を果たしていると言える。スイッチとしての手によって「ない」世界が「ある」世界に変わり、それを繰り返すことで、子供は楽しみを見出しているのではないだろうか。

精神分析学の創始者であるフロイトも、「いないいないばあ」と同様の遊びに見られる「不在-在」のくり返しが、「有る-無い」という意味構造を子供の精神に形成させると述べている。子どもがスイッチを好むのは、精神の成長にとってスイッチが重要な役割をはたしているから、と言えるのかもしれない。

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