No.008 特集:次世代マテリアル
連載03 変わるモノづくり産業のビジネスモデル
Series Report

第2回
分業化とグローバル化が同時進行

 

  • 2015.03.31
  • 文/津田 建二

半導体産業には大きな特徴が二つある。一つはさまざまな領域に広がり拡大し続けていること。これは第一回「単なる製品販売から、従量制・レンタル・消耗品などの形態へ」でお伝えした。もう一つの特徴は、分業化がますます進んでいることだ。分業体制は国内・海外の区別がもはやなくなっている。いかに優れた企業と組むか、それが今のグローバル化の焦点になっている。

自分の長所を最大限に伸ばし、苦手な所は他の人に任せる。古来の日本には「餅は餅屋」ということわざがあった。実は、これこそが今、世界企業の勝ちパターンとなっている。古来のことわざを忘れ、何でも自社で作ってしまおうと考え、負け組になってしまった印象が強いニッポン。世界の勝ち組は分業の大きな流れに乗っている。

かつて、半導体産業では、モノづくりを全て自社で賄うのが通例だった。まだ産業が出来たばかりの頃は、結晶作りから、結晶の切り出し、ウェーハ加工、ウェーハ処理(プロセスと呼ぶ)、設計図面、マスクを(ガラス基板上に描かれた光を遮蔽・通過させる回路パターン)作り、処理終えたウェーハからチップに切り出す工程、チップを台座に載せる工程、端子を外部で取り出すためのボンディング、チップの封止、リード端子加工、といった基本工程において、テスト、検査などの装置も必要で、全て自社開発していた。外部で取り扱える業者がいなかったからだ。

1970年代前半までは自社で全て行うことが一般的だった。しかし、これらの工程が複雑になり、1社だけでは製品に仕上げるまでに時間がかかりすぎるようになった。と同時に製造装置や設計ツールだけを扱う企業も生まれてきた。後工程(ICの製造におけるチップ切断以後の工程)だけを行う企業も生まれ、半導体産業は分業化の道を歩み続けるようになった(図1)。しかし、いまだに全てを賄おうとする日本の半導体産業は、苦戦を続けている。

半導体産業は分業の歴史の図
[図1] 半導体産業は分業の歴史

半導体業界は、設計だけを担うファブレス企業と、前工程(ICの製造におけるに回路を形成する工程)の製造だけを受け持つファウンドリ企業に大きく分類されるという認識を持つ人が多い。しかし、図1で見るように半導体製品に至るまでには、ファブレスとファウンドリ以外の企業も関わっている。かつては半導体製造装置でさえ、半導体メーカーが内製していたが、今では、東京エレクトロンやアプライドマテリアルズ社、ASML社など製造装置の専業メーカーが活躍している。設計するためのCAD(computer-aided design)ツールは、今はEDA(electronic design automation)ツールと呼ばれ、これもシノプシス社、ケイデンス・デザイン・システムズ社、メンター・グラフィックス社といった設計ツールの専業メーカーが扱っている。

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