No.006 ”データでデザインする社会”
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エネルギーや産業分野では、M2M市場に期待が高まる

IoTはさらなる広がりが期待されている。例えば、電力マネジメント、農業、医療といった分野で、機器同士を結ぶM2M(Machine to Machine)である。産業用機械の遠隔監視や、電力の使用状況をチェックして節電を行うスマートメーター、土壌の状態をセンサーで調べて自動的に給水を行う農業機械など、巨大な市場が誕生することになりそうだ。

巨大IT企業もIoTには強い関心を持っており、関連企業の買収を積極的に進めている。元アップルの開発者が創業したネスト・ラボがGoogleによって買収されたのはその一例だ。同社は「Nest Learning Thermostat」というデバイスを販売しているが、これは室温をセンサーで読み取り、人の行動を学習して空調を最適に調節し、消費電力を抑える。さらにスマートフォンからもコントロールできるという「スマート」なサーモスタットだ。

デバイスだけでなく、それを支えるインフラ分野でも競争が加速している。上記のNest Learning Thermostatは通信にWi-Fiを利用しているが、M2M分野では1GHz以下のサブギガヘルツ帯といわれる周波数帯が中心的な役割を果たすようになりそうだ。サブギガヘルツ帯は2.4GHz帯より通信速度は遅くなるものの、見通しの悪い屋内でも通信しやすいという利点がある。日本国内でも2012年7月25日から920MHz帯が免許不要で利用できるようになったことで大きな盛り上がりを見せており、中でも注目を集めているのが、東京電力のスマートメーター(電力消費をリアルタイムに把握できる電力計)とホームゲートウェイ(宅内の機器情報を集約する装置)間の通信に採用されることが決まった「Wi-SUN」だ。Wi-SUNは「IEEE 802.15.4g」という名称で、IEEE(米国電気電子学会)で規格化されており、業界団体のWi-SUNには日本の情報通信研究機構(NICT)のほか、世界の有力電力計メーカーなどが名を連ねる。Wi-SUN対応同士の通信距離は約500mで、さらに複数の端末を中継すれば、数十km離れた場所とも通信が可能になる。NICTは2015年頃を目処に、Wi-SUNの通信モジュールをスマホやタブレットにも搭載していく考えだ。また、東京電力はスマートメーターの導入スケジュールを前倒しにして、2020年度末には全顧客への導入を完了させるとしている。仮に、対応製品が順調に増えてくるならば、2010年代後半にはスマホ、家電、産業用機械などが、Wi-Fiのような感覚でつながる環境ができているかもしれない。

スマートハウス、ウェラブルデバイスや体重計などからの情報を元に健康管理を行うサービス、在庫管理システムと連携した自動倉庫などは今でも存在しているが、通信方式が規格化されることで市場が急拡大する可能性がある。

ネスト・ラボの「Nest Learning Thermostat」の写真
[写真] ネスト・ラボの「Nest Learning Thermostat」。サーモスタットの既成概念を壊す斬新なデザインが話題を呼んでいる。https://nest.com

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