No.006 ”データでデザインする社会”
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経済

モノのインターネットとつながっていくビッグデータ

ECサイトやSNSでビッグデータ活用が進んでいるのは、こうした分野が最初からデジタルデータを扱っているからだ。デジタル化が進めば、ありとあらゆる分野でビッグデータが活用されることになる。

家電や自動車、ウェラブルデバイスなどに搭載された各種センサーがネットにつながり、機器同士が自律的にデータをやりとりする「モノのインターネット」というキーワードが話題になっているが、これとビッグデータ活用は表裏一体。モノのインターネットが広まるほど、ビッグデータの活用範囲も広がっていく。

FacebookによるMovesの買収は象徴的だ。スマートフォンアプリのMovesは、起動させておくだけで、ユーザーの行動(徒歩、自転車、交通機関など)を自動的に認識し、位置情報を記録していく。今後はFacebook上での交流データと、リアルな行動データを紐付けることで、より効果的なレコメンデーションサービスや広告サービスが展開されることになるかもしれない。Jawbone UP(下記イメージ参照)やFitbitなどウェラブルな活動量計も人気だが、いずれもデバイス自体の販売だけが目的ではなく、ユーザーの行動データを集め、それを元に事業を創造することを狙っている。特に米国では、医療保険改革法(オバマケア)において予防医療の推進が決まったため、この市場に参加する企業も急増している。

日本でも、東芝や日立製作所などが予防医療サービスへの参入を表明している。東芝は東北大学と共同で、皮膚に貼り付けたり食事に混ぜて飲み込めるセンサーを開発する予定。患者の健康状態をセンサーで常時管理し、データを分析することで病気の徴候を検出することを目指す。

JAWBONEのUP24の写真
[写真] ウェラブルデバイスから集められたユーザーの健康情報には、巨大なビジネスチャンスが埋まっていると考えられている。写真は、JAWBONEのUP24。https://jawbone.com/up

製造業における歩留まりが格段に向上

製造業の現場でも、ビッグデータの利用は進みつつある。一番のポイントは、生産ラインから得られるデータの種類や量を増やし、それらを解析することで歩留まりを高めることにあるといっていいだろう。

例えば、2014年4月から、オムロンの草津工場で開始された実証実験は、プリント基板表面実装ラインにおける品質向上と生産性改善を目的としている。この実験では、ハンダの印刷機や、電子部品の配置装置などから生産実績データを抽出。生産する基盤の種類や勤務シフトなどの切り口からリアルタイム分析を行って可視化を行い、非効率な箇所を見つけることを目指す。

また、自動車メーカーでは、エンジンを構成する部品と、それに対する工程をデータベースで管理し、製造特性のデータを蓄積。これを元にビッグデータ解析を行い、部品を製造する際の最適条件を割り出すということが行われている。

さらに、ビッグデータが活用されるのは、生産ラインだけに限らない。ダイキン工業のエアネットIIというサービスでは、ビル用エアコンに取り付けた専用装置で、稼働情報を収集し、クラウドに集積して分析を行っている。これによって故障が起こる確率を事前に予測することで、メンテナンス作業の効率化を実現した。

ユーザーの使っている製品からデータを取得して分析することができれば、メーカーはユーザーの特性や行動に応じてサービスを提供できるようになる。製造業におけるビッグデータ活用は、製造業自体をサービス業へと転換させていくことになる。

製造業も、ビッグデータを活用することでサービス業へと転換が進む写真
[写真] 製造業も、ビッグデータを活用することでサービス業へと転換が進む。
photo: Ildar Sagdejev

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