No.006 ”データでデザインする社会”
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経済

社会インフラの合理化が進む

社会インフラ、特に交通分野でもビッグデータ活用は盛んに行われている。

その一例が、走行している自動車からの情報を利用したサービスだ。トヨタ自動車は、G-BOOKというテレマティクスサービス(自動車などへの情報提供サービス)を提供しているが、G-BOOK搭載車の位置情報や急ブレーキをかけた場所などの情報を集約し、(個人情報を削除するなどの加工をした上で)「ビッグデータ交通情報サービス」として2013年5月から企業や自治体などに提供を開始した。企業での利用シーンとしては効率的な物流ルートの作成や貨物のトラッキングが想定されているほか、災害時には緊急車両や避難所の施設情報も合わせて地図上に表示して支援活動に役立てることも検討されている。また、G-BOOK搭載車からのデータは、交通渋滞も考慮したルート案内サービスにも利用される。

2011年末からGoogleも交通状況の把握にビッグデータを利用している。同社の場合、利用するのはスマートフォンからの情報だ。スマートフォンからの情報は匿名化されてGoogleに送られ、位置情報と速度データを元に交通の流れを計算し、Googleマップ上に表示している。

現在のところ、交通分野におけるビッグデータ活用は交通状況の把握が中心だが、究極的な目標はGoogleなども開発しているロボットカーのような完全自律型の自動交通システムということになるだろう。カーネギーメロン大学のOzan Tonguz博士らが研究している「Virtual Traffic Lights」(仮想信号機)は、自動交通システムを実現する上で、重要なマイルストーンになるかもしれない。Virtual Traffic Lightsシステムでは、交差点に近づくと、自動車が速度や位置情報などのデータを近辺の自動車に送信する。付近にいる自動車の間にはネットワークが構築され、どの方向に向かうグループを優先するかの判断が自動でなされ、各自動車のディスプレイには仮想的な信号が表示される仕組みだ。各ドライバーは、この信号の指示に従って自動車を運転する。ポルトガルの港湾都市ポルトで行われた実証実験において、ラッシュアワーを想定したシナリオでは通行のスムーズさが60%向上したという。

経済や政治の分野でも、ビッグデータの活用が有効であることが明らかになってきている。

Yahoo! JAPANでは、内閣府が発表している景気動向指数の推移と、関係性のあるキーワードを抽出。これを元に、週次での景気観測がある程度可能であることを示した。また、同じくYahoo! JAPANでは、2013年6月の参院選議席予測にもビッグデータを利用。複数選挙区の16区のうち13区で獲得議席数を的中させた。

IBMは、アメリカのクイズ番組で優勝したこともあるスーパーコンピューター「Watson」を使ったビッグデータ解析によって、アフリカの問題解決に乗り出すことを2014年2月に表明している。アフリカが抱える問題は非常に多岐にわたるが、IBMではまず医療と教育の問題に取り組むとしている。例えば、サハラ砂漠以南の地域では、子宮頸がんの発生率が世界の他の地域に比べて圧倒的に高い。Watsonを用いたビッグデータ解析によって、病気の発生地域と生活習慣等の相関関係を明らかにし、予防につながる施策を見つけることが目標だ。教育については、さまざまな社会的な要因を解析して、学力向上につながる施策を見つけることを目指す。衛生環境や、子守りを兄弟が担うかどうかといった文化的伝統などの要因が、学校への出席率にどう影響しているかなどを探る予定である。

ユーザーのスマートフォンからのデータを交通状況の写真
[写真] Googleマップでは、ユーザーのスマートフォンからのデータを交通状況の表示に利用している。

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