No.006 ”データでデザインする社会”
Topics
経済

農業などの一次産業が知的産業へと変化

IT化が遅れているといわれている日本の農業でもビッグデータを活用するための取り組みが始まっている。目的は、やはり生産性の向上だ。

富士通の農業向けクラウド「Akisai」では、ビッグデータを活用して最適な栽培暦(農産物の栽培管理用スケジュール)を作成するサービスを2013年12月から提供している。このサービス以前からも、各農場に設置したセンサーで温度や湿度などのデータや作業内容をクラウドに記録する試みは行われていたが、栽培暦の作成はそれぞれの農家が自分で行う必要があった。収量の高い農家の栽培方法をビッグデータ解析し、品種や地域に応じた栽培暦を作って共有できれば、ノウハウの少ない農家でも生産性を上げられるようになる。一方、トヨタ自動車は、米作農家向けの支援システム「豊作計画」で、ビッグデータの活用を打ち出した。豊作計画には、9社の農業法人が参加を表明しており、作業実績はクラウド上で共有される。立地条件、土壌、温度湿度、天候、品種、肥料、作業工程などをデータ化し、どのような条件が揃った時に、おいしい米が低コストで多く収穫できるのかを明らかにすることが目的だ。データに基づいて計画的な生産を行うことで、コストの低減や品質の安定化が期待できる。経験と勘の要素の大きかった農業が、計画的な製造(生産)の行える産業へと変化していくことになる。

海外では、ビッグデータ活用が農業分野ですでに大きなビジネスとなっている。例えば、Climate Corporationは、国立気象サービスのリアルタイム気象データや、過去60年間の収穫量等の情報を元に独自のビッグデータ解析を行い、天候予測や農作物の収穫予想サービスを提供している。同社は天候予測を行うだけでなく、予測が外れた場合の逸失利益をカバーする保険も農家に提供している点に大きな特長がある。2013年10月には、MonsantoがClimate Corporationを買収したことが大きな話題を呼んだ。Monsantoは、バイオテクノロジーによる遺伝子組み換え作物の種子を開発、世界中で販売している。

富士通の沼津工場内に開設された「Akisai農場」の写真
[写真] 農業におけるICT活用を検証するために、富士通の沼津工場内に開設された「Akisai農場」。
Climate Corporationが提供しているiPhone用のアプリの写真
[写真] Climate Corporationが提供しているiPhone用のアプリ。土壌や天候の状況を確認できる。

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.