No.008 特集:次世代マテリアル
Scientist Interview

銅よりも低い抵抗

──配線材料として、グラフェンのどのような可能性が見えているのでしょうか。

現在配線材料として使われているCu(銅)は、塊の状態の抵抗率が約2μΩcmです。幅が狭くなると表面と粒界で電子が散乱してしまい、急激に抵抗率が高くなり、微細化したときに配線として十分な特性が得られません。グラフェンでは、我々のグループが産業技術総合研究所出向時に、8nm幅のナノリボンを使って、微細な配線材料としての適性を調べています (図3)。その結果、抵抗率が3.2μΩcmと、銅微細配線を大きく上回る特性が得られました。

8nm幅のナノリボンでデバイス用として十分な抵抗率を確認の図
[図3] 8nm幅のナノリボンでデバイス用として十分な抵抗率を確認。(8nm幅はElionix ELS-F125で測定)※MLGは、Multi-Layer Grapheneの略。
出典:Kondo et al.,IITC2014,p.189(2014)

また、ジョージア工科大学のグループは、同じくナノリボンを使い、長さ10μm以上のバリスティック(無散乱の)伝導を観測し、1μΩcmをはるかに下回る抵抗率が得られることを報告しています。このデータを報告する論文は、科学雑誌「Nature」に投稿されたのですが、他のグループが追実験して確かめてから掲載されたと聞いています。それほど、衝撃的な値なのです。

実は、これらの結果は、理論値と比較して良すぎる結果なのです。グラフェンは、形成する基板や周辺の環境によって、電気的な性質が大きく変動します。まだ私たちが知らない現象が関与している可能性があるようです。Siも実験で見られた様々な不思議な現象を解明することで、現在のように半導体デバイスの材料として使いこなせるようになりました。ナノカーボン材料も、実用化に向けてはこうした部分をしっかりと抑えていきたいと考えています。

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