No.006 ”データでデザインする社会”
Topics
経済

ビットコインの仕組み

仮想通貨であるビットコインの実体は、コンピュータネットワーク上のデジタル情報である。紙幣や貨幣のような物体の移動を伴わないため、本質的にコピーされやすい。ビットコインの信頼性を確保するためには、何らかの仕組みにより、改ざんや二重利用等の不正使用を防ぐ必要がある。

ビットコインはナカモト論文において、「デジタル署名のチェーン(連鎖)」として定義されている。たとえばAさんからBさんに送金する取引の場合、Aさんは自分のビットコインのデータにBさんの公開鍵*2を追加して、デジタル署名を添付する。このデジタル署名により、取引データが改ざんされていないことと、Aさん本人が署名したことが証明できるので、ビットコインの所有者の移動が明確になる*3

デジタル署名のチェーンで表現されるビットコインの写真
[写真] デジタル署名のチェーンで表現されるビットコイン

ただこれだけでは、二重利用を防ぐことはできない。たとえばAさんがビットコインのデータをコピーしておいて、Bさんに送金したあと、素知らぬふりをしてCさんに送金したとしても、Aさんのデジタル署名は本物なので、Cさんはそれが二重利用されたビットコインであることには気づきようがない。

もしビットコインに、全ての取引履歴を記録しておく管理サーバーがあれば、そのビットコインの現在の所有者を簡単に調べられるので、一度使ったビットコインを再び使うことはできないだろう。だが、ビットコインはそうした管理体制を嫌い、P2Pネットワークを前提として設計されたために、サーバーがなくても不正使用を防ぐことができる仕組みが別途必要となる。

それが「プルーフ・オブ・ワーク」(POW: Proof of Work)と呼ばれる仕組みで、これこそがビットコインの核心とも言える部分だ。

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.